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トイレの神 -1-

この参道をのぼれば、神社が見える。

青年は朝から歩いていた。


草いきれがむっとたちこめる参道である。

顔も背すじも汗にまみれ、休まず歩く息づかいがあらい。


この参道をのぼれば、神社が見える。



「あの少年の気持もこんな感じだったのかなぁ」

「どうした突然、大丈夫か?熱中症かえ??」

 似たような景色が延々と続く手入れの入ってない、キツイ山道を登らされていると考え事の一つぐらいはしたくなる。

 どこまで登れば着くんだろうな、これ……


「ええぃ! スミキチ、シャキッとせい!」


 バンッ!と後ろを歩いていた上司に背中を叩かれる。

 痛くは無いのですがバランスを崩して倒れかねないのでやめてください。


「すみません。ちょっと、この仕事について考え事してました……」



-大嘘である-



 目の前の上司は、顔色を見た後

「……GPS・コンパスがあるとは言え参道かつ山道じゃぞ?」

「道に迷ったり、怪我をしたら引き返すことも視野に入れなければならぬ」

「入ってまだ二ヶ月ほどじゃが、こういった廃村、山道はモノノケや悪霊が出やすい。余り気を抜かぬことじゃ」


「……はい。」


 体力を消耗したくなかったのか、つい生返事をしてしまう。就職した直後は体力に自信があったがここまでキツイ物もあるとは思わなかった。


「ふむ。目的地まであと500mほどじゃが、少し休むとしようかのう」


 そう言っておもむろに木陰に腰を下ろす。こちらも仕事で使う荷物などを降ろし、休む

 時折ふく風がありがたい。随分登ってきていたのかよく見ると、下の方に朝方通った村『だった』場所が見えた。


 そう『だった』場所である。今は廃村となり建築物は野生動物と草木が住む場所となっている。

 もちろん今歩いている場所も整備されていた場所だ。今では木で整われた道は木が腐り落ち、そこから雑草が生え、ここが参道であったと言われなければ獣道と勘違いする人もいるだろう。


「今も昔もそう変わらんもんじゃな。住めなく、住みにくくなれば人は地を離れ、生き残れる場所に移っていく。」

「薄情という者も中にはいるがワシはそうは思わんよ」

「……話を変えよう。こういう景色を好む者もおるが、お主はどうじゃ?」


 まるでそれも風情のようだという言い回しをする。これに対する答えは決まっていた。


「嫌い-ですね。こう、何もかも中途半端に残っているのは」

「そうか。それもいい」


 そうあっけなく応えられる。もしかしたらありきたりな答えだったかもしれない。


「「・・・」」


 廃村に目を移す。一体何年ほど遡れば活気があった村に戻るのだろうか。


「バブル時代にじゃな、とあるドラマがあってのう。そのドラマ、当時そこそこ流行ったらしくてな」

「村人が村おこしの一環として、ここがそのドラマの舞台ですよと適当言ってな。そのドラマにも神社が出てきたからの、それに合わせる為にあの場所に神社ができたんじゃ」


 まるで疑問に答えるかのように、同じく廃村になった村を眺めつぶやく。

 その顔は見えない。あえて見せないのだろう。

「ま、神社が作り終える頃には大分ブームは過ぎていたから人は来ないし、バブルも弾けて今こうして面倒な事になっておる」


 視線をこちらに戻す。いつもどおりの仕事の顔だ。


「……スミキチ一応仕事なんじゃしな?目的地の歴史を調べるのも仕事の内じゃぞ、今は地理や体力づくりで手一杯かもしれんが。こういうのは仕事をする上でそこそこ重要じゃ」


「ういっす。精進します。」

 先程より、元気よく返事をする。やはり少しばかり休む時間があればなんとかなるものだ。


「うむ!よろし。休憩はもうよいか?」

「大丈夫です。もうひと頑張りしましょうか。」


 再び荷物を背負う、背中の汗が冷えており、じんわりと嫌な感覚がした。

 そして深い溜め息の様な深呼吸をし、再び階段だったものを登り始めた。

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