第二章 運命の胎動
ゲームファンタジー第二話!
ファンタジー好きは入りやす…くない!(ナニ
いよいよ始まる物語、どうぞお楽しみ下さい!
※本作品には過剰な作者の混沌が現れています。主に文章とかに。
全てが構成される。
クロアは世界が完成するのを待つ。それも大した時間にはならなかった
世界が完成すると同時に画面右上に『エリア:平原』と表示される。
周囲には起伏の乏しい草の大地、なるほど『平原』だ。
「…」
どうすりゃいいんだ?
彼は何も知らないことに気が付いてやや衝撃を受ける。武器とか無いのも痛い
「茶髪、出てきな!」
しんと静かな平原に虚しく声だけが響く。
…と、いきなり後ろの草むらが揺れてクロアは振り返る。その人物はそのままクロアを押し倒た。クロアが地面に倒れる寸前に銀色の物体が額を掠める
「いって!」
ドサリと倒れたクロアは殴りかかろうと自分の上にいる人物を睨み付ける。と
「よう、狙われてんぞ」
灰色のTシャツにやや色の濃い長いズボンを穿いた茶髪がそこにいた。
「てめぇ…」
「ストップ、とりあえず逃げるぞ」
茶髪は中腰で草むらから顔を出さないようにして警戒する。
「なぁ相棒、どうしてここにいるってわかったんだ?」
その質問に茶髪の相棒は鼻で笑う
「そりゃ、こんな場所でつっ立ってりゃ丸見えだ。おまけに全員お前を狙ってやがる」
警戒するように周囲を見ながら相棒は虚空に手を伸ばす。
引き出された時、手には一枚のカードが握られていた。彼はその武器の名を囁くように呟いて解き放つ
「『竜の尾』」
大気中の水分が彼の手元に収束して、押し固められて剣に変わる。幅の広い簡素な片刃剣の腹には竜の紋様が刻まれている。
そして彼はクロアに近くに来るように促す
「突破するぞ、それから…」
茶髪は剣を膝下に構える
「俺は『ガルト』だ。茶髪じゃねぇ!」
薙払った瞬間、水の波が平原に出現した。
茶髪…もといガルトはその波の後ろを走り出す。波は止まること無く津波のように陸地を濡らして突き進む。
草むらに隠れていた数人が逃げ出して開いた脱出口を身を潜めながら素早く抜ける
「ちっ」
ガルトは草むらから上空を斬り払う。ガガガッと草むらに銀色の金属がついた木の棒が突き刺さる。…どう見ても矢だ
「もう体勢を建て直したか、やるな」
そう相棒は楽しそうに呟く。そして再び虚空からカードを抜いて発動する
「水呪『水蛇』」
剣の先端からにょろりと細長い水が飛び出して空中をどこかに飛び去る
「引きが悪いな…時間稼ぎしか出来ないな」
ガルトは走り出す。
クロアもぬかるんだ足元で滑らないように気を付けながら後を追う数分間は銀色の軌跡が目に入ったがそれもすぐに見えなくなった。どうやら逃げ切れたらしい
「ふぅ…訓練には向いてない場所だな…」
ガルトは乾いた岩に腰かけて笑う。クロアもそうだな、と同調して荒くなった息を整える
そんなのを見ながらガルトはクロアに話しかける。
「お前、武器の出し方はわかるか?」
知らない。と簡潔に答える「だからあんなアホみたいに立ってたのか…」
蹴りをいれる。
見事にスニーカーの角でクリティカルしてガルトはうずくまって唸る
「いってぇぇぇ!」
いい加減にうっとうしいので先程までガルトが座っていた岩に腰かけて蹴り飛ばす。
「てめぇ…覚えてろよ?」
「うっとうしい。話進めろ」
かなり高圧的に睨み付ける。ガルトはブツブツと文句を言いながらも話し始めた
「武器はこの『装具』のカードに収まっている」
そう言って彼は虚空から一枚抜き出して見せる。
「武器には個々に名前があって手持ちのカードから名前を呼んで解放するんだ」
彼は先ほどの剣を見せつける。じっくりと見れば青竜刀と似た形なのに気が付いた
「そう。武器には持ち主のイメージが反映されて、それに応じて名前が刻まれる。人によってできる武器は無限にあるわけだな」
うんうんと頷いて途方もない技術に感心しているガルトを現実に引き戻す
「カードの取り出し方は簡単だ。『空中に置かれた手札に手を伸ばす』ってなイメージで掴めば良い」
クロアはスッと空中に手を伸ばす…。手は確かに何かを掴む
「そんな感じだな。流石は俺の見込んだ奴だ」
ガルトは立ち上がる。草の上から顔を出してクロアに伏せろと呟く
ぶおん、と轟音をたてて頭上を巨大な何かが通過する
「囲まれた。何でもいいからカードを使え!」
ガルトは虚空から三枚のカードを取り出して投げる。三枚は水を出して互いを繋ぎ止める
「水術『白蛇の猛進』」
三枚の呪符が巨大な蛇の姿に変わる。真っ白な体に赤い目はとても際だって見えた。
「押し潰せ!白蛇!」
シャー、と舌を伸ばして蛇は主人の命令に答える。巨体を身軽に動かしてここからは見えない敵を駆逐していく
「手札…こいっ!」
クロアも虚空に手を伸ばして掴みとる
「装具『長剣』!」
白い光がカードから放たれて手にズシリと重みが感じられる。光が消えたとき、クロアの手には1メートル50センチ強の剣が握られていた。
重力に引かれた瞬間に思わず両手で持ち直す。とても重い!
「クロア、一つだけ言う」
ガルトは白蛇を操りながら声をかける
「このゲームはイメージが最大の武器だ。常に思考を止めるなよ!」
それから死ぬんじゃねえ、と言われてクロアは小さく笑う。
「一つじゃねぇよ」
そして草むらを走り出す。
敵の場所は白蛇が暴れているので推測出来る。
人は目の前に巨大なものがいたらすぐとなりにいる小さなものは視界から消える。例えば象の隣に犬を座らせたらば人は間違いなく象に目を持っていかれる
だから、あとは白蛇よりも目立たないように行動すれば問題ないはずだ
クロアは素早く剣を握り直して奇襲のタイミングを狙う
一瞬だけ攻撃が止んだ。
クロアは剣を背負うようにして立ち上がり一番近くにいた背の高い男に振り下ろす。男は驚いたように目を見開いて手に持った片手剣で攻撃を弾く
「集中攻撃!」
男が叫ぶと草むらから二人が左右からとびかかって来る。二人ともナイフのような武器を逆手に握っている
「水符『海竜の尾』」ガルトの宣言を受けて白蛇がその大きな尻尾でしゃがんだクロアの頭上を薙払う。二人組はどこかにまで飛んでいってしまったが気にしないでおく
クロアは剣を横に構えて一気に距離をつめる。今度は敵も反応してカードを取り出す
「『パリィ』」
クロアの長剣と比べるとあまりにも脆弱な剣は触れた途端に剣を跳ね上げる
「斬符『フェドゥンラピス』」
重ねられた二枚目の呪符が発動してがら空きになったクロアの胴部を狙う
「あぶねっ」
咄嗟に後ろに飛び退いて緊急回避する。若干ぬかるみ始めた地面で滑ったが立て直す
「クロア!避けろ!」フッと振り返ると目の前には空を覆うような矢の弾幕が待ち構えていた。
「冗談キツいぜ」
矢が雨霰とクロアの周囲数メートルをビッシリと縫い付けた…
ガコン!
「クロア、ゲームオーバー!」
機械が外れるのと同時に意識が現実に引き戻される。会場にいる人々の喧騒が耳に痛いくらいに鋭く突き刺さった
クロアは他の椅子を見る。
参加者は残り6名、ガルトはまだ善戦しているようだが…
「5対1じゃ勝ち目はないな」
冷静になって自身を振り返る。物珍しさに興奮していたのかもしれない先程までのテンションに笑う
「ははは…馬鹿だな、俺は」
クロアはキャラクターカードを取り出して自分の姿に呟く
「冷静さ、気を付けるぜ」
小さく呟いた一秒後
ガコガコガコン!と騒々しく機械から人が4人吐き出される。その中にガルトはいない
「流石はガルト!奇跡の大逆転だぁぁぁ!」
司会の煽りに観客は色めき立つ
ガコン!と最後に吐き出されたガルトは、危なかったと言いつつも余裕そうに手を振っている。あの人数差を覆すなんて化物なのだろうか?
「勝っちまったぜ、実力があると辛いねぇ」
クロアはやや驚きながら余裕な相棒を見つめる。何があったのかモニターを見ていなかったのは失敗だったかもしれない
クロアは自分に呆れてため息をつく
本当に今日の俺はおかしいな…、そう思いながら椅子から立ち上がってガルトの肩を叩く
「お前も初戦にしちゃうまかったじゃねぇか。次も頑張ろうな」
「…だな、次は勝つぜ」
二人は先に退場した四人組を追うように舞台裏に消えて行った。次の試合のコールがかかり場内がザワザワとしはじめた…
ボコリ…とゲーム世界に黒い泡が現れた
暗い階段を降りる。舞台裏は配線が見えており表側の賑やかさとは別だ。
クロアはそんな所には目もくれずにサクサク進んで再び会場の観覧部分に到着する
どうやら次の試合はスタートしているようだ。モニターには『エリア:平原』と書かれており10人の矢印が右往左往している
「連続フィールドか、珍しいな」
「そうなのか?」
「あぁ、フィールドは大量にあるからな、連続して同じエリアは中々出ないんだ」
ほぅ…と感心しつつモニターを眺める
誰も見えない。隠れているから当然なのだが…面白くない
「クックック、平原が嫌われる理由の一つだな。活躍が見れないもんな」
相棒から愉快そうに笑いが漏れるほぅ…とクロアは納得して再び画面に見いる。とその時
「待って!」
金髪が真後ろから叫んでいた
「リセットして!早く!」
エアリアルの叫びなど誰も聞かない、聞いてない。彼女は次の行動に移ろうと走り出す
「待てよ」
クロアが呼び止める
「何かあるのか?」
彼女は答えない、だが否定もしなかった
「…はやく、しないと」
そう呟いて走り出す。その時、凄まじい雑音が会場を貫いた。
「なんだ?」
振り返るとモニターが黒くなっていた。電源でも落ちているのだろうか
ザワザワと皆落ち着かないように囁きあう。ガルトも眉をしかめて何事かと考えている
「あー、配線トラブルです。復旧までお待ちください」
司会が申し訳なさそうに告げる。なるほどと全員納得、していなかった。「また回線だってさ」
「またかよ、何回目だ?」「最近多いよな」
「噂じゃ変なモンスターが出るらしいよ」
「いや、おばけだろ」
「いやいや、妖精だってさ」
「新しい仕様変更じゃない?」
賑やかに憶測が飛び交う
「仕様変更か…」
ガルトはポツリと呟く。どことなく期待した響きがあるやはりベテランは飽きてくるのだろうか?
クロアもちょっとだけ眉をしかめる
「…ん?」
ザワザワとした呟きが変わっているのに気付く。何故かスタッフが集まっている
「砂嵐の影響です。ちょっと通して下さい」
一人が参加者を背負っており、もう一人が道を開けるように叫ぶ。背負われている参加者はぐったりとしており精気がない
「…」
押し黙った無音が次第に侵食を始め、そしてスタッフが見えなくなった途端に叫びに変わる
ガガガガガッと同時に吐き出された残りの参加者を舞台裏で控えていたスタッフが支える。観客は叫びとも悲鳴ともつかない声を上げて逃げていく。残ったのはたったの数十人
「…ありえねぇ」
クロアの呟きは正常か、はたまた異常かは誰にもわからない。困惑と戦慄が会場を支配する
バタバタと舞台が騒がしくなる。司会がマイクを片手に放送する「只今から緊急サーバーメンテナンスに入ります。試合のご予約の方は受付までお越しください」
虚しく響く
「…行こう、エントランスで店でも見よう」
相棒の言葉に静かに賛同する
二人は閑散とした会場に背を向けて、入り口に向かって歩き始めた…
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あとがき
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変換ミスで「あとがま」になりかけましたシロツバです。お久しぶりです。
こんな形で連載するのかな?毎回いろいろ選択してるけど…うーん
さて、前回はあいさつで終わったので近況を一つ…
まわりからインフルエンザが出始めました!!
みなさんも気を付けて下さいね、今年はタミフル効かないのが多いようですし。
一体どうやって耐性を得るんでしょうね?
あんなマイクロ単位の生物は普段何を考えてるんでしょうか…
と、科学選択者が考えてみる
生命の神秘ですね
では、今回はこのへんで
また次回お会いしましょう!( ̄▽ ̄)ノシ