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松平王国との取引が始まり、私の商会も忙しくなってきました。
残業です。
空き教室の荷物の陰で書類整理中です。涙が出ます・・これはうれし涙です。くすん・・
書類整理を進めていると誰かが教室に入ってきました。まずいです。
「最高神たる闇の神の眷属セレネよ、我を隠したまえ。」
私に闇色の光が降りそぎます。
これでおそらく見つからないでしょう。
今の私は、腕カバーにねじり鉢巻きでほかの人に見られると、ちょっと侯爵令嬢としてのあれですよ・・・
「・・マリーンドロス侯爵が・・」
あれ、お父様の名前が聞こえます。気になるので覗いてみましょう。
「・・だが準備は順調で国境では、ガーレイア伯爵やオーデンツ男爵と話がついております。また・・」
私が聞いていることがばれたら殺されますね。ガクブルです。
「マリーンドロス侯爵家が目障りだな。」
いやだ、死にたくないよ、助けて殿下、お父様・・・
散々怖い話をしたのちに第2王子とそのとりまき達は去っていきました。
殿下はいつもなら、まだ図書室にいるはずです。
超特急で殿下のもとに走っていきます。
「殿下、殿下、殿下、殿下「どうしたその顔と恰好はなんだ。」」
私の格好は腕カバーにねじり鉢巻きで大泣きして化粧も崩れています。
そんな事は無視して私は殿下に抱きつき泣きじゃくりました。
「どうした、そなたらしくないぞ何があったのだ。」
殿下は優しく頭をなでてくれました。
ここは王宮です。
私の前に国王陛下がおられます・・
ことが事だけに私はそのままここに連行されました。
あ、腕カバーにねじり鉢巻きは、外しましたよ当然
「挨拶はよい、そのほうが見聞きした内容をすべて話せ。」
話し終えると、陛下・王太子・殿下・宰相の4人が悪い笑顔を浮かべて話し合いを始めました。
私は怖くなったので掴んでいた殿下の服を離して部屋の隅にいた女性近衛騎士にしがみつきました。
「大丈夫ですよ。」騎士様の言葉に安心したせいでしょうか、その後の記憶がありません。
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今日は、毎年恒例の王宮での舞踏会です。
主だった貴族が参加するので帝国に内通している者を一網打尽にするそうです。
「はー、帰りたい・・」
「マリーンドロス様もう少し頑張りましょう。私たちが就いております。」
そばには、ドレス装備の女性近衛騎士とそのエスコート役の3号がいます。
本当は、舞踏会へ参加したくないのに怪しまれるからと殿下に引きずられてここに来ました。一般的にはエスコートされて来たとも言うが・・
「そろそろですか。」
自然に見えるように特定の貴族から皆離れていきます。
会場警備の近衛騎士が一斉に動き出しました。
1人が包囲を抜けてこちらに来る。
「マリーンドロス、死ね!」
敵はナイフを投げる。
私をかばうように女性近衛騎士が前へでます。
金属同士がぶつかる音がしました。
「マリーンドロス様大丈夫です。敵はテラサルド様が取り押さえました。」
え、テラサルド様・・だれのこと?
目を開けると・・
3号です。3号が敵を取り押さえています。
「3号、強かったのね・・・」
一網打尽にできたようです。殿下がこちらにやってきました。
「ケガはないか、フィルスリィーナ」
「はい、何ともありませんわ、アードル殿下」
殿下は私の傍まで来ると少し驚いたような顔をなさいました。
「侯爵邸まで送ろう。」
ガラガラガラガラ・・
馬車の中は静かです。誰も話をしません。
お願い、誰か話をしてください。怖いのです、寂しいのです・・
「唐揚げが食べたいです。」
「・・・」殿下が無言で頭をなでてくれます。
「お嬢様・・・」侍女のセリナは、残念な人を見る目をしています。
「ぷっ・・」
「ガーベラ様、唐揚げはおいしいのです。楽しいのです。元気になれるのです!」
私は、女性近衛騎士に抗議しました。
「ああ、そうだな。」
殿下はそう言って私の涙をぬぐってくれます。
「あれ・・なんで。」
今日の私はダメダメです。自分がよくわかりません。
「殿下、侯爵邸に到着いたしました。」
今日の私は何か変だ、こんな日はさっさと寝るに限ります。
急いで馬車を降りると、なぜか殿下が一緒についてきます。
「アードル殿下、どうして付いてこられるのですか?」
王宮に帰らなくてもよいのだろうか、私を心配して付いてきてくれるのでしょうが、さすがにこれ以上は我儘が過ぎるでしょう。
「そなた、気づいていないのか?」
「へ・・」
なんと私が殿下の服の裾を握っています。
「あれ、あれ・・大変申し訳ございません。なぜか手が離せないのです。」
殿下の服を放そうとしても手が動いてくれません。
「フィルスリィーナ、もう怖くない、ここは侯爵邸だ。大丈夫だ。」
そう言うと頭をなでてくれます。なぜでしょうか、その後の記憶がありません。
目を覚ますと、私は自分の部屋で寝ていました。セリナの話では殿下は帰られ、近衛騎士のガーベラ様は隣室で控えているそうです。
「今日はもうお休みなさいませ、お嬢様」
私は薄暗いベッドの中かで今日のことを思い出します。
恥ずかし!!
うわー、いつからです、殿下の服を掴んでいたのに気づかないなんて。
いくら鈍感な私でもそろそろ理解していますよ。殿下といると安心するのです。
分かっていますとも、私が殿下を・・
私がベッドで悶えて転げていると、セリナとガーベラ様が飛び込んできました。
ごめんなさい・・・何でもないです。