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空想の絵  作者: 白上 しろ
7/8

約束だよ

次の日、学校にて

こずえのクラスメイトの『春日ゆかり』。入学式以来、こずえとは大の仲良しです。外見がとても似ているので、二人は髪型を変えて(こずえはポニーテール、ゆかりはツインテール)ちょっとした違いをアピールしていました。そんなゆかりが、こずえに話しかけてきました。

「おはよう、こずえちゃん」

「あっ、ゆかりちゃん。おはよう……」

いつもと様子の違うこずえに、ゆかりは心配そうに言いました。

「どうしたの? 元気ないよ?」

こずえはごまかすように答えます。

「あっ、ううん。そうかな?」

ゆかりは不思議に思いましたが、話を続けました。

「ねぇ、こずえちゃんはもう決まった?」

「えっと、何だったかな?」

「絵のコンクール。 テーマは自由だったじゃない?」

「あっ、もうそんな時期なんだ」

「なーんだ。こずえちゃん絵が上手だから、もう決まってるのかと思ってた」

「まだ決まってないよ。ん? そうだ!」

「何? 決まったの?」

ニコニコしながらこずえは言いました。

「ううん。まだだよ」

「えっ? じゃ、何?」

「ふふーん」


こずえは学校の帰り道、老婆の家に立ち寄りました。

「庭に入ったら、また怒られるかな?」

こずえは扉を開けず玄関の前で話します。お互い姿が見えないまま、言葉を交わしました。

「おばあさん、こんにちは」

最初は無言の老婆でしたが、あきらめたように言いました。

「また来たのか……」

「あの、今度絵のコンクールがあるんです」

「それがどうしたんじゃ?」

「もし入賞したら、もう一度会って欲しいんです」

「会ってどうする?」

「会ってみたいんです。会ってお話して、おばあさんともっと仲良くなって、それから……」

こずえは空を見上げました。晴れ渡った真っ青な空です。

「……わかった。わかったよ。もしお前さんが入賞したらもう一度会ってやるわい」

こずえは弾むように喜びます。

「本当ですか! 約束ですよ?」

「ああ、約束じゃ。……じゃが、もっと他にやりたいことがあるじゃろう。もうすぐお前の運命を告げる時がやってくるはずじゃ。病気でないところをみると、おそらく不慮の事故じゃろう。死んでは何もできん。残りの時間をもっと好きなように過ごしたらどうじゃ」

「はい。でも、私の今一番のお願いはコンクールで入賞して、おばあさんと会うことです。絶対約束ですよ」

老婆は小さく鼻で笑いました。

「……そうかい。それじゃ、もう何も言わないよ。頑張っておくれ」

「はい!」

こずえが去り、老婆は手に握りしめ続けて、ボロボロになったこずえのお守りを見ました。

「まだ、あたしの声が聞こえるかい……。もうどうにもならんか。こんなことなら追い出してやるんじゃなかった。せめて今度会う時は冷たくしたことを謝らねばならんのう」

老婆は虚ろな目で静かに微笑んでいました。


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