どうして怒っているの?
次の日。いつものようにこずえは老婆の家にやってきました。
「こんにちは。おばあさん」
いつもは素っ気なくても、素直にこずえを受け入れてくれる老婆ですが、今日は違いました。老婆は怒鳴りました。
「またお前か! 何しに来たんじゃ!」
老婆の言葉にこずえは驚きます。そして申し訳なさそうに言いました。
「あっ、あの、クッキー焼いたから食べてもらおうと思って」
老婆はあっさり断りました。
「いらんわい!」
いつもと違う老婆の態度に、こずえはオドオドし始めます。
「おいしくないかもしれませんけど、一つだけでも・・・・・・」
「いらんと言うたじゃろう!」
こずえは心配になって尋ねました。
「どうしたの? おばあさん。何かあったんですか?」
「何もない、お前には関係のない事じゃ」
「でも……」
老婆は一喝しました。
「帰れ!」
「え?」
「もう二度とお前の顔なんか見たくない! 帰れ!」
こずえは目に涙を浮かべていました。
「あの…… クッキーここに、置いておきます。良かったら…… 食べて……ください」
こずえは泣きながら老婆の家を後にしました。
こずえの姿が見えなくなると、老婆は力が抜けてため息を漏らしました。
「これで良かったんじゃ……。これ以上会っても辛い思いをさせるだけじゃ。これで良かったんじゃよ……」
老婆はこずえからもらったお守りを握りしめながら願いました。
「どうかあの子を助けてやってください。お願いします・・・・・・」