内緒にしないと
こずえは家に着きました。母が待ちかねたとばかりに尋ねます。
「どうしたの? 遅かったじゃない」
「ごめんなさい。ちょっとお話していて」
「この時期は腐りやすいのよ。気をつけてね」
「はーい」
夕食時。こずえは父、母の家族三人で食卓を囲んでいました。母親が尋ねました。
「今日は誰とお話していたの?」
「ええと、買い物に行く途中に通る交差点の手前の・・・・・・」
「お米屋さん?」
「その向かいのお家のおばあさんと」
「あら?」
母が首を傾げます。
「あんな所におばあさんなんていたかしら?」
父が言いました。
「あそこは空き家で誰も住んでないはずだが。何かの間違いじゃないか?」
こずえはハッとしました。
「あっ!(おばあさんは死神だったんだ。だから他の人には見えないんだ)ええと、間違い・・・・・・ あの、嘘」
母が怒ります。
「こずえ!」
こずえは体が小さくなって頷きます。
「はい・・・・・・」
「いつからそんなこと言うようになったの?」
「ごめんなさい」
父は怒るわけでもなく、普段の様子で尋ねました。
「じゃ、誰と話してたんだ?」
「ええと、誰とだったかな? あはは・・・・・・ ごちそうさまでした!」
こずえは箸を置いて、急いで部屋を出ると二階にある自分の部屋に向かいました。
「こずえ!」
呼び止めようとする母を、父がなだめました。
「いいじゃないか、かあさん」
「えぇ?」
「こずえだって私たちに聞かれたくないことだってあるさ」
「もうそんな年頃かしらねぇ……」
こずえの部屋の中。
「はー・・・・・・ おばあさんの事は話せないわ」