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空想の絵  作者: 白上 しろ
2/8

天国ってどこにあるの?


「死神?」

こずえは『死神』と聞いてもピンときません。

「あたしの仕事は死人を天に連れていくことじゃ。いきなり現れてはびっくりするじゃろうて、死が近い人間にはあたしの姿が見えるようになっておるんじゃ。死が近いと言っても人様々じゃが長くとも一ヶ月はないじゃろう。ヒッヒッヒッ! どうじゃ驚いたか?」

こずえはまばたきをして、どこかぎこちなく頷きました。

「そうかい、そうかい。ヒッヒッヒッヒッ!」

「おばあさん」

「何じゃ? あたしを恨んでもどうにもならんぞ!」

「おばあさんは寂しくないんですか?」

こずえの的外れな質問に、老婆は驚きました。

「なんじゃって?」

「だってみんなにはおばあさんの姿が見えないんでしょ?」

「それが仕事じゃからのう。それだけか?」

「え?」

「お前はもうすぐ死ぬ運命にあるんじゃぞ? 他に何かあるじゃろう」

こずえは考えます。

「ほれ、素直に感じた事を言えばいいんじゃ」

しかし、答えらしきものがまるで出て来ません。

見かねた老婆が怒っていいました。

「なぜ怒らんのじゃ!」

こずえは驚きます。

「なぜあたしに怒りをぶつけようとせんのじゃ。自分が死ぬ事に不公平だと感じんのか? おかしいと思わんのか?」

「うん・・・・・・」

こずえはそのまま俯きました。

「それを説得させるのも、あたしの仕事のうちじゃ」

こずえはつぶやくように言いました。

「でも」

「でも、何じゃ?」

こずえは顔を上げました。

「よくわからないから」

老婆も何と説明したら良いか、分からなくなりました。

「うーむ、困ったのう」

こずえは空を見上げます。

「わー、見ておばあさん。飛行機雲! あんな高いところに!」

老婆も空を見ました。

「おぉ・・・・・・」

感動のない口調で、それ以上の言葉がありません。そんな事はお構いなく、こずえは尋ねました。

「ねぇ、おばあさん。天国ってあの雲よりも高い所にあるの?」

「そうじゃ、一度行けばもう戻れないくらい高い所にある」

こずえは感心したように言いました。

「ふーん、すごい所にあるんですね、天国って」

「そーかのう・・・・・・。いや。そうじゃのう。天国はすごい所じゃ」

こずえは元気を取り戻したように嬉しそうに笑いました。でも、またすぐに大事な事を思い出します。

「あっ!」

「どうしたんじゃ?」

「お買い物の途中だったんだ。あぁ、早く冷蔵庫に入れないと。おばあさん、ごめんなさい。家に帰らないと」

「おお、そうか」

「お邪魔しました。あの、また遊びにきてもいいですか?」

老婆はまた驚いて言葉が詰まりました。

「あ? あぁ、かまわんよ。またおいで」

「ありがとうございます」

こずえは後ろ向きに手を振りながら走って行きました。こずえが行った後、老婆の目はどこか寂しげに見えました。


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