仕事で返そう
街から出てからもしばらく歩くマグニと、それに黙ってついていく田天パーティ。マグニの後ろ姿を見ながら、田天は考えていた。
(なんで悪魔軍の幹部だったマグニさんが、あの街でひっそりと働いてるんだろう。普段は悪魔であることを隠してるっぽいし。
なにか事象があるのかな?)
道中、マグニの目の前に魔物が現れた。大剣を持った巨人の魔物。マグニの身長は150センチほどだが、魔物は彼の5倍くらい大きい。
足を止める田天たち。正直楽しみではあった。
軍師とは言ってもセブン・スペルズと肩を並べる悪魔軍幹部だった男の戦闘が。
「・・・・。」
魔物を見上げて黙り混むマグニ。そしてクルッと首だけ振り向くと、
「ほれ、フレイラ。倒してくれ。」
「いやあんたがやれよ!」
「ろ、老人にこんなにでかい魔物と戦えと申すか!」
「元悪魔軍幹部なんだろ?いけるだろ。」
「ワシ、頭脳特化だから戦いはまるでダメだけど?」
マグニがそう言うと同時に、サラが電光石火のごとく魔物に突っ込んでいく。魔物は剣を振り上げていたところだったが、サラの蹴りを顎にもらって一撃で倒れた。
「やるねぇ天使の姉ちゃん。」
「困った老人は助けるのが常識ですから。」
「・・良いのぉ。ワシも天使に生まれたかったわい。」
「天使はあんな大金提示しないと思うけど・・。」
カレアの一人言がパーティ全員の心に響くのであった。
それからしばらく歩いたところでマグニは再び足を止めた。
目の前に広がるのは大きな畑。近くにはなにやら田天が見たことのない野菜が置いてある。
「ここはワシの畑じゃ。ここでコツコツ農作業をして生活しておるのじゃ。」
「なるほど。情報屋以外にも仕事をしているというわけか。」
感心するマルク。そして彼が野菜を手に取ると、
「これは、“ルビーン“だな。しかもこの色、なかなか上質なやつだぞ。」
「ほう、そちらのゴブリンは喋るうえに野菜の見分けもできるのかい。」
仲良く会話するマルクとマグニの後方で、田天は腕を組んで考えていた。
(ルビーンって何・・・)
「さて、お前さんたちには数日間ここで働いてもらう。その働きに応じて借金を減らしていこうじゃあないか。」
優しく笑うマグニ。サラやアロマ、マルクにカレアは理解を示していたが、フレイラと田天は違った。
「コツコツ畑作業してあの額を返済すんのか!?何年かかると思ってんだ婆さんになるぞ!」
「婆さんになれよ。」
「そのころにはあんたは死んでるだろうな。」
言い争うフレイラとマグニ。
田天はその横で大きな不安を抱えていた。というのも、彼に『仕事』というワードはなかなかに突き刺さる。
(仕事・・か。考えてみたら久々に働くことになるのか。
どうしよう。ポンコツがばれる。100パー怒られる・・。
今回ばかりはルシフェルの体補正も通用しそうもないし・・・。)