旅の意味
「お前が抜けたら、この旅の意味がないだろ。バカ。」
「・・え?」
田天の背後から、たしかに声がした。聞き覚えのあるその声に彼が振り向くと同時に、背後に積み上がった天井の残骸が勢いよく吹き飛んだ。
なにが起きたか分かっていない田天。
凄まじい衝撃によってその残骸とともに彼はぶっ飛び、反対側の壁に激突した。
「いっ・・た・・。」
その場でうつ向きながら背中をさする。
すると彼は目に写る地面が明らかに光っていることに気がつき、パッと顔を上げた。
そこには腕を組み蹴り上げた足を上げたままの体勢のフレイラと、その横で柔らかい笑顔をしているアロマが立っていた。
そしてフレイラの魔力のせいか、この暗い部屋はパァッと明るくなっていた。
「よ、よくここが分かったね。」
腰をさすりながら立ち上がる田天。フレイラは大きなため息を一つつく。
「気配をたどってなんとなく歩いてたらここに着いた。
しかしお前、まだ悩んでたのか。相変わらずガラスメンタルだな。
いいか、よく聞けよ?私たちは目的は違えどルシフェルに会うために旅をしてるんだ。
やつの「もとの体」を持つお前がいなくなってどうする。」
「・・そうだけど、さ。」
「私はやつを倒すために旅に付き合ってるんだ。「その体」のルシフェルを倒すためにここまでやってきたんだ。
ここでいなくなられたら迷惑なんだよ。他のみんなもおそらく同じ思いだぞ。邪魔をしないでいただきたいね。」
フレイラの言葉にはトゲのような鋭さが感じられたが、それが優しさの裏返しであることは田天には分かっていた。
アロマが少し前に出て、そして田天を見上げる。
「私は迷惑とは思っていないけど・・でもあなたにはいなくなってほしくないな。
私とお父さんを救ってくれた田天には感謝してもしきれない。
私の目的も大事だけど・・あなたの目的も達成してほしいよ。」
「俺の・・目的・・。」
アロマが言う“田天の目的“。これはもとの世界に帰ることをさしているのではない。
彼自身の、成長についてだった。
そして田天は再びうつむいた。改めて自分の愚かさを知った。
「ま、ゆっくり改善していけばいいですよ。
今の時点でも初期に比べれば成長しているはずですからね。」
フレイラたちのさらに背後から、サラとカレアも登場した。