孤独の堕天使
サラの技で空いた大穴をしばらく見つめた後、しばらくしてからサラの方に向きなおしたカレア。
その表情はなにやら腑に落ちない感じに思える。
「サラ・・あなた、なぜ技をあんな的外れな場所に撃ったの?」
「・・・ふふっ。」
真剣に質問したカレアに対してサラは微笑しながら答える。
「見ましたよね?あのふざけた威力。予想した通り、地形がすっかり変わってしまいました。
あんなもの、仲間に当てられるわけがないでしょう?」
「・・・。」
「ただ試したかったのです。実践で“あれ“がどこまで使えるのか、をね。
あの感じなら、溜めさえうまく済ませられれば十二分に使えそうです。」
笑顔で語るサラに、カレアはいつしか緊張をほどいていた。
「なんだったの?あの技。」
「私が間近で田天の魔力を観察し、そして肌で感じた魔力を参考に編み出した技。とりあえずは“ルシファー“と仮の名をつけています。
もともと私とルシフェル様は同じ『天使』。
もしかしたらと思い、研究に研究を重ねてひそかに“ルシファー“を制作していたのです。
もっとも、『本物には及ばない』『それなりの溜め時間と体力が必要』『作成した魔法武器は一度使うとすぐに消滅する』と、さまざまな欠点があるところが課題なんですけどね。」
サラとカレアはともにゆっくりと地上に降り、地に足をつけると微笑みあった。
「休戦しよう・・そしてお互い田天探しに専念しよう!」
「ええ、ていうか本来そういうゲームですからねこれ。」
そのころ田天は地下中に響き渡った衝撃音にビビりまくっていた。
いまだにあの部屋にこもりながら・・。
「怖いんですけど普通に・・なに?化け物かなんかがいるわけ?」
気づくと、先ほどまでは輝いていた魔法石のいくつかはその光を失っていた。
薄暗い狭い空間に、明かりは魔法石たったの3個。そのどれもが弱い光しか放っておらず、言うなれば豆電球しかつけていない部屋のような状態に保たれている。
小心者の田天にはなかなかこたえた。
(そういえばニート時代はこのくらいの明るさの部屋でずーっと過ごしてたっけか。
特になにもせず天井見たり、たまにネットをしたり寝たり。
家族はみんな働いてたのに、一人でずっと・・
考えてみたらバイト先にも友達とかいなかったなぁ。
そういう意味では、今のこの状況となんら変わらないのかも・・。
ずっと、孤独だった・・
家族しか話す相手はいないけど、迷惑はかけたくない。
学生時代の友達は・・みんな社会人として生きているんだろうな・・
俺だけ異世界か・・・・。)