微かな気配
「地獄の・・」
口角を上げ、目をギラつかせながら手を構えるカレア。
その手のひらの先には、冷や汗を垂らしカレアを見たまま固まっているサラがいる。
カレアと詠唱の途中、サラの目が青く光った。
絶望的に見えたその表情を、ふてきな笑みに変えて・・。
「・・・甘いですよ、カレア。」
バチィィッ!
と、大きな音をたててカレアを地面めがけて蹴りつけるサラ。
彼女の右足の先はカレアの左肩をとらえ、詠唱の途中にもかかわらずカレアは下方に吹き飛んでいく。
「なっ・・!?」
吹き飛ばされながらも上空に浮かぶ標的、サラの方に向きなおす。
「じ、地獄の業火よ・・・!!」
上空の天使は、その腕をカレアに向けていた。
腕には眩く光る青い武器が搭載されていた。よく見ると「ボウガン」のようだ。
空気中から魔力を供給しているのか、武器のまわりには青い粉のようなものが舞っている。
そしてなによりその魔力。魔法使いのカレアが「あること」に気づくのに時間はかからなかった。
(これは田天の・・ルシフェルの魔力・・?)
サラの武器から放たれる魔力と、田天が解放したときのルシフェルの魔力の「色」や「性質」が明らかに似ている。
「まさか・・・!」
「・・・“ルシファー“!!」
サラの武器から放たれた魔法の矢は、カレアのいる方向とは逆の方向に放たれた。サラがわざと狙いを外したのだ。
矢は衝撃波を撒き散らしながら直進し、地面に当たると大音量でその一帯を吹き飛ばした。
あまりの衝撃にカレアは固まってしまう。
「なんだよ今のは・・!」
周辺を歩いていたフレイラにもその様子は伝わっていた。
まさに彼女の目の前で矢は地に突き刺さっており、衝撃を肌で感じていたのだ。
彼女がひょこひょこと被弾した場所に近づくと、すでにそこには大穴が空いておりその下にある地下室のようなものがむき出しになっていた。
「うっひゃ~・・半端ないな・・。」
よく見ると穴の中心部、一番深いところに魔法の矢が微かに残っていた。それを見たフレイラもまた、それが「ルシフェルの魔力」と似ていることにすぐに気づいた。
しかし彼女はさらにもうひとつ、あることに気がついた。
(この地下室みたいなところから微妙に、ほんとに微妙にだが・・田天の気配がする・・ような気がする。)
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