天使による新たな技
「カレア、あなたには私の新たな技の実験台となってもらいましょうかね。」
「新たな技?」
カレアのはるか上空から彼女を見下ろすサラ。そんな彼女を、厳しい状況下でも強い眼差しで見上げるカレア。
先ほどまでは互いの技でどんぱちやっていたこの場が、今は静寂に包まれている。
「最近思ったのです。
この先の戦い、守護術だけでは厳しいのではないかとね。
私が使える守護術は全部で88。そのどれもが便利な技ですが、いかんせん効果が弱い。
相手を弱らせる技も、相手を攻撃する技も、そして守るための技も、全てが中途半端な効果。
とてもじゃないですが、これじゃあメリアーマのような化け物が敵になれば太刀打ちできません。
現に、ハーランドという強者には自慢の守護術もあまり効果がありませんでした。
そこで考えました。私がこれからとるべき戦法をね。」
サラは右手を下にいるカレアにかざすと、魔力を高め始めた。
青い魔力がサラの周辺から彼女の右腕に集まってきた。そしてやがてそれらは固体となり彼女の右腕で「武器」のようなものとして姿を変えた。
(なんだあれは・・?)
カレアが観察するに、まだなんの武器かは分からない。だがハッキリと分かることはこの技にはある程度の時間がかかり、かなりの集中力や体力を必要としているということだ。
サラの表情は超有利なバリアを貼っているとは思えないほどの苦しそうなもので、それにカレアも疑問を抱いた。
(あんなに勝ち確定レベルのドームがありながらわざわざなぜこの技を使うの?
そうか、なるほど。この技にはそれなりの「タメ時間」が必要・・だからこそあのバリアを貼った。
タメ中に邪魔をされては困るからね。
そして私の読みが正しければ・・・!)
カレアはビュンとサラの場所に飛んでいく。
勢いよく飛び出した彼女は軌道をユラユラと変えながら、たしかな超スピードでサラの真横まですぐに到着した。
苦しそうな顔で、目線だけ横にいるカレアに向けるサラ。
「地獄の業火よ焼き尽くせ・・『ボルケーン』!!」
両手でドームに直に触れるカレア。その詠唱が終わるとドームは一気に赤く変色し、そして炎に包まれた。
カレアはそこから少し距離をとり、鋭い目でその様を眺める。
数秒後、炎が消えるとサラがその中にいた。相変わらずの苦しげな表情。
そして彼女のまわりからドームが消えていた。
「やっぱりさっきのははったりだったんだね、サラ♪」
「・・・!」