最強の魔法壁?
「外が騒がしいな・・。」
地下で丸くなって待機している田天。彼の頭上では、サラとカレアの戦いが繰り広げられていた。
田天のもとにはその戦闘音のみが伝わっており、逆に自分がいる場所の静けさを痛感してしまう。
「いつまでここで待っていればいいんだろう。」
彼は今、洞窟のような場所にある、謎の一室に姿を潜めている。
魔法石による光でなんとか照らされてはいるが、暗くて静かな空間。
部屋の中にある石の数は五個。そのどれもがほんのりとした程度の光を放っている程度で、とてもじゃないが一人でいるには不安になってしまう。
だがこれはかくれんぼ。田天は覚悟を決めそこに身を委ねた。
見方を変えれば芸術的空間ととらえることもできなくはないし。
「・・・へぇ。」
地上ではカレアが腕を組んで、サラを上目使いで見ていた。
サラはボルケーンをもろに受けたにもかかわらず、平然とそこに浮遊している。
「カレア・・ちょうどいい機会です。あなたには私の、天使の本当の力をお見せしておきましょうか。」
「・・面白いわね。ぜひお願いしようかしら?」
サラの言葉にも堂々とふるまうカレア。
そんな彼女を相手に、天使はさらに上空へと移動する。そして両手を広げると、詠唱を開始する。
「守護術・第26番 “鋼鉄の魔法壁“」
サラを中心に半径1メートルほどのドームが出現した。うす紫色をしたそのドームを前に、カレアはふふっと笑った。
「なにかと思えば防御技?
神よ裁きを与えたまえ・・『ボルテクス』!」
ドームのさらに上から、サラめがけて雷が落ちてくる。しかしドームがそれを妨げる。
「このドームには一切の魔法攻撃は通じません。これが出現した時点であなたの勝機はなくなりましたよ、カレア。」
「なっ!?」
己の主軸となる戦法を封じられてひるむカレア。その絶望的な顔を見てサラはひとまず安心した。
(鋼鉄の魔法壁・・実はこの技、魔法耐性があるとはいってもちゃーんと限界はあるんです。
強すぎる魔法や貫通系の魔法を食らえば壊れてしまいます。
弱い魔法でも当て続ければ壊すことは可能・・。その性能は名前負けしていると天界では有名な技です。
ですがここは、カレアには嘘を信じてもらいますかね。そのほうが便利そうですし。)