空が不気味な理由
マルク、フレイラ、そして田天の三人はとりあえず近くの町を探し歩き始めた。歩いている田天は、自分の目線が元の世界の時よりも高いことに気が付いた。
「マルクさん、このルシフェルの体って身長いくつぐらいなんです?」
「ルシフェル様は約190㎝ほどあると言っていたな。」
「ひゃくきゅ・・・マジですか。」
本来170㎝ほどの田天が違和感を感じたのも無理はなかった。
「あ、村が見えてきたね。あそこに行こう。」
小さな村を見つけたフレイラは嬉しそうに指をさす。マルクは少し苦い顔をする。
「考えてみたら、ルシフェル様はすんなり入れるだろうか・・。」
「ん?どういうことだ?」
「いや、数日前にルシフェル様がこの周辺で暴れていてな。この不気味な空はその時に広がってしまったのだが、そのことを村人たちが知っていたら・・うーむ。」
マルクの言う通り、ルシフェルは三日前にこの上空で暴れまわっていた。いくつかの村には攻撃を仕掛けており、壊滅した村もある。フレイラが見つけた村は幸運なことにルシフェルの被害を受けていないようだったが、うわさや目撃者などの可能性を考えるとルシフェルの姿をした田天が村に入れるかはわからない。
「そもそもなんで、ルシフェルは暴れたんです?」
「それが俺にもわからなくてな。ある日いきなりルシフェル様は神に反逆し、暴動を起こした。神の部下に攻撃を仕掛けたり、天界で暴れまわったり・・俺はそれを止めることなどできなかった。
そのあと、神の一撃を受けて俺ともどもルシフェル様は下界に突き落とされた。その衝撃で六枚あったルシフェル様の羽は二枚消滅し、そして大幅に戦力が減ってしまった。いまのお前ほどじゃないがな。」
「・・・なるほど。」
「ほんとうになんで・・ルシフェル様はあんなことを・・。」
「・・ふん、そんなことしててもルシフェルについていくなんて、お前も変わっているな。」
「当たり前だ・・俺はあの人に命を救われた。その時に誓ったのっだ、何が起きてもこの人についていくと。」
自信満々に言うマルクの横では、田天が腕を組み考え事をしていた。不気味に濁った空を見ながら。
(やっぱり俺の認識通り、ルシフェルは反逆者だったのか。だとしたらこれから復讐にやってくるやつや、弱ったところを狙ってくるやつとかが現れてもおかしくない・・・
勘弁してよぉ・・だいたいなんで暴れたんだよ、なんで・・・)
「入り口が見えてきたね。よーし、ついたらおいしいモノ食べるぞー!」
「元気だな・・。」
田天は自分と対照的にテンションが高いフレイラを見て、少し羨ましくなる。フレイラが振り向きにこっと笑う。
「人生は一度きりだぞ?楽しめる時に楽しまなきゃ!まぁ、悪魔の寿命は1000年はあるけどね。」
「は、はぁ・・。」
その時だった。村の前に青い光が集まってきたのは。光は徐々に人の形になっていった。
「な、なんだありゃ!」
「人・・?」
「やっと見つけましたよ、ルシフェル様。」
青い光から声が聞こえた。そして光は消え、代わりに一人の天使が残った。銀髪に青い服を着た女性、左手には杖を持っている。そして彼女の背中には白い羽が生えていた。
「天使・・?」
田天は一瞬で察した。この天使が、自分を始末するために天界から送られてきた使者だと。