絶対的な自信
牢獄の中でくつろぐバイスを田天は心配そうな表情で見る。バイスはこの状況でもなんら恐れる様子は見えない。
「バイスさんはこれからどうなるんですか?」
「さあな。まぁ脅迫状を送りつけて実際に大群で街を襲撃したわけだから、それなりの罰は受けるだろう。死ぬかもな。」
「・・なぜそんなに気楽に振る舞えるんですか?僕同じ立場なら、きっと震えが止まらない。」
田天のもとへバイスが近寄る。牢獄の檻を掴み、そのガシャンという音が部屋に響く。
「自分に絶対的な自信を持ってるからだ。
俺は失敗しないし、絶対大丈夫。つねにそれを心の中に思い抱きながら生きている。
だがそんな俺が希望を捨てた瞬間があった。お前に、敵わないと悟った時だ。」
「・・・。」
「自信を持て田天。お前はできるやつだ。魔力を解放したお前は誰にも負けん。
そしていつか、「本来のお前」にも自信を持て。お前の優しさは、必ずだれかの役に立つ。」
「本来の・・?」
「さて、もう喋り疲れた。一人にさせてくれ。」
背を向け、離れていくバイスに田天は最後の質問をぶつける。
「なんで僕に気を使ってくれるんですか!?あなたを倒した敵なのに・・」
「・・・俺に似てるからだよ
竜使いなのにドラゴンになつかれず、絶望していた昔の俺に・・」
「・・・。」
しばらく静かな時が流れた。そして田天は黙って一礼し、階段を上がっていった。
(頑張れよ田天。
あの時はキャンブル何て言っちまったが、お前には少しくらいの冒険が必要だよ。)
アムールの入り口にそろう田天パーティ。そこにはカレアの姿もあった。
「マルク、お前私たちが戦ってる間になにしてたんだ?」
「むろん戦う準備だ。建物の影でな!」
「戦う気なかったですよね?それ。」
和気あいあいと盛り上がるフレイラたちを前に、カレアが一歩踏み出した。
「わ、私も同行させてもらえないかな?
あなたたちの近くにいることが、一流の魔導士になるための近道になると思うの。だから・・」
「もちろんオッケーだよ。」
間を空けずに答える田天。他のメンバーもこころよく同意した。
「ありがとう・・!
さぁ行きましょう田天!ともに最強を目指して!」
皆に背を向けアムールから一足先に出ていくカレア。その頬が少し赤く染まっていたことを、サラは見逃さなかった。
(嫌な胸騒ぎがしますね・・。)