悪魔の名は
「こいつが・・!」
サラは現れた悪魔を前に構えをとった。
カレアはボロボロ、兵士たちは戦力として考えると厳しい。田天は悪魔を見てから怯えたような様子を見せており、とても戦力にはなりそうにない。
サラはこの場でこの悪魔と戦えるのはおそらく自分だけだと考えた。光の剣の先を悪魔に向けて、体全体に魔力を張り巡らせる。
悪魔側もバイスは瀕死の状態で捕まっておりベリアも戦える状態ではない。実質サラと水色の悪魔の一騎討ちという形となっている。
(絶対に隙を見せてはいけません・・こいつはヤバイ、間違いなく・・・)
「くくく・・まぁそう身構えるな天使よ、お前と戦うつもりはないよ。」
「・・・?」
悪魔はゆっくりと田天のもとに近づいていく。サラは超スピードで回り込み、田天の壁となる。
ハァとため息をつく悪魔。そして魔力を一瞬だけ解放すると、サラの背後、田天の目の前まで移動した。気配すらまるで感じない移動。
何が起きたか分からないサラは突然のことに焦るも、剣を悪魔に振る。悪魔は田天の目を見たまま、その剣を指で受け止めた。
「なっ!?」
「大丈夫だ、田天にも攻撃はせん。そこで見ていろ。」
悪魔の言葉にサラは脱力し、剣を消滅させた。彼女はこの一瞬で力の差を感じていた。
「さて、田天くん。私の名はメリアーマ。君の記憶の通り、君をこの世界に転移させた者だ。
今日は君の実力を見せてもらうために来たんだ。噂は悪魔界にも届いているよ。
ところでどうだい?ここでの生活は?」
「・・・・・。」
答えることができない田天。絶対的なルシフェルの力を得た彼でも、あの忌まわしき苦しみを思い出すとなかなか行動に移れないのだ。
「・・ふむ、やっぱり相変わらずガラスメンタルか。いくら強くてもこんなんじゃいつか殺されるぞ。悪魔か、天使か、はたまたそれ以外の誰かに・・。」
「・・・・・うぅ。」
うつむく田天を、バイスは黙って見ていた。
「まぁいいよ。さっきも言ったように君を攻撃するつもりはない。
この“弱い“ルシフェルのまま、この調子で生き続けていてくれたまえ。それが私の狙いなのだからな。」
メリアーマと名乗った水色の悪魔はボロボロのベリアの右腕を掴むとその場で浮遊した。高い場所から田天らを見下ろす。それを苦い顔で見上げるカレアとサラ。そして弱気な顔で横目で見上げる田天。
「メリアーマ様・・バ、バイスは助けなくてよろしいのですか?」
「あいつは新入りだし期待はずれだったからもういらん。古い仲であるお前だけは特別に助けてやるんだ感謝しろよ?」
「・・・・ありがとう、ございます。」
ベリアは浮かない顔でうつむく。そしてチラッと城の方を見た。ところどころ崩壊しているアムール城。そのどこかに今フレイラが倒れている。
(フレイラ、次こそ決着の時だ・・!)
その時だった。捕まっているバイスが田天に凄い勢いで叫びかけた。
「田天!!ここでやつを逃がしたらずっとこのままだぞ!!
ここでへこたれてたら!ほんとにいつか誰かに殺されるぞ!!」
「・・・・・!」