再会、始まりの悪魔
吹き飛んできたのは悪魔将軍のベリア。彼はひどく傷つき、立ち上がることさえ困難な状態であった。
そんな彼の前に、神々しい光とともにサラがやってきた。彼女は冷酷な表情でベリアの前に立つ。
「終わりです。今のあなたでは私にはかなわない。」
「くっ・・無念・・、万全の状態ならこんなやつ・・。」
ベリアはフレイラとの激しい死闘によりかなり弱っていたのだ。それゆえサラとは戦いにすらならなかった。サラによってここまで飛ばされ大ダメージを負ったベリアにもはや戦う力は残されていない。
「あ、誰かと思えば田天!そちらは大丈夫でしたか?」
サラは田天に気づくと表情をやわらげ、彼の安否を確認する。
「だ、大丈夫だよ。街のみんなも兵士たちも無事みたい。」
「しかし街の外の兵士たちは・・。」
その場にいたカレアは田天たちが知らない“外の様子“を伝えた。爆発による被害を受けた兵士たちは今なお外で倒れているのだ。
「・・やつらは死んではいない。半殺しでとどめた。」
捕まっているバイスが呟いた。その言葉に一同はホッとしたが、ベリアは彼を鋭い目でにらんだ。
「バイス、貴様どういう・・つもりだ?」
「俺は殺しは嫌いでね・・マーカスもカレアも命を奪うまではしなかった。まぁ途中で街ごと消そうとは思ったがな。
俺はただ強いやつと戦ったりでかいことをしたかっただけだ、悪いな。」
「・・・・もういい、ここで全て終わらす。田天、貴様もここで終わりだ。」
ベリアはうずくまったまま、己の魔力を引き出し始めた。金色に光るベリアに田天やカレアたちは目を奪われる。
サラが一歩前に出てベリアの角を掴む。そして反対の手に光の剣を出現させるとベリアの首もとに刃をつきつけた。
「なにをしているのです?悪魔。」
「自爆だよ。俺の残された魔力を使ってこの周辺を無にしてやる。
切りたければ切れ。それが爆発のトリガーになるがな。」
「・・卑怯ですね。」
そのままの体勢で止まるサラに、魔力を呼び覚ましながら笑うベリア。自分はボロボロで相手は無傷だというのに、彼はいっさい恐れない。
その時、彼らのはるか頭上から光が差し込んできた。
強い水色の光。ただしサラの放つ光とは違い、嫌悪感を覚える邪悪な魔力が感じられた。
その混沌とした光を浴びたサラ、ベリア、バイスの三名はその光源にすぐに気づく。
(悪魔・・それもかなり上位の・・・!)
光は眩さを増し、その場の誰もが目を覆った。そしてその“光源“が地に降り立つと光はバシュっと音をたて消滅した。
「やあ田天、久しぶりだな。」
田天は目を擦ると、降り立った人物を見た。そこにいたのは記憶に強く残っている、悪魔の姿だった。
いま彼の目の前にいるのは水色の悪魔。彼は見覚えのある白い服を着ており、その青い瞳が田天をのぞきこんでいる。
彼こそまさに、田天をルシフェルとしてこちらの世界に送り込んだ二人の悪魔のうちの一人であった。
あのとき田天に事情を説明していた彼の姿は田天の脳に強く刻まれていた。
「あのときの・・。」
目を丸くし、その場で固まる田天。
「ずっと俺を探していたのだろう?調子はどうだね、田天くん。」
いつも読んでいただきありがとうございます。
これからは1話1話をもうちょっと短くして、読みやすくしようと思います。これからもよろしくお願いいたします。