捕縛
フラフラになりながら地上に降りてきたバイス。体には特に致命傷は見られないが、いたるところにダメージの後が見られ息も荒くなっている。
「はぁはぁ・・。」
弱ったバイスはゆっくりと田天のほうへ歩いていく。それを田天はその場で黙って待ち構える。
残された魔力を手に終決させ、ボロボロの竜使いはその手を田天に向ける。彼の目はほんの少し、ほんの少しだがまだ光が残っていた。
「・・!」
彼の手から放たれた火球は田天の顔面を見事にとらえた。そして直撃すると爆発をひき起こした。爆風は田天の背後に発生したためカレアや兵士たちは被害を受けずに済んだ。
しかしもちろん田天はもろにその影響を受けている。
「田天っ!!」
爆風がやむと、田天はその場にたっていた。驚くことに、直撃を受けたはずのその顔は、攻撃を受ける前とまるで変わっていない。
そんな彼を見てバイスはうつむき、そして小さく笑う。
顔をあげるとその目にはもう光が宿っていなかった。
「よぉし田天、殺せ。」
手を広げて無抵抗を示すバイス。
兵士たちは勝ちを確信し盛り上がる。ハイタッチをする者や、「田天さん!やってしまってください!」と声をかける者もいる。
「・・・。」
田天は静かにバイスを見つめる。そんな彼の体からは魔力がバラバラと散っていき、表情も冷たい顔から少し弱気に見えるもとの顔に変わった。そして完全に魔力が尽きるといつもの田天に戻った。
「兵士のみなさん、彼を捕縛してください。殺さない・・ように。」
「な・・なんだと?」
田天の心づかいに疑問を持つバイス。そんな彼を3名の兵士が取り押さえ、動けなくなるようにヒモで縛った。
田天はその場で彼に背を向け膝をつく。
「ふふふ・・田天よ、甘いな。
さきほどの鬼神のような姿、あの時と今とではやはり性格が違ったか。
お前はまだ根本的な問題が解決されていない・・
さきほど俺と戦えたのもあのふざけた強さと技、そしてあの姿による性格の変化のおかげなわけだ。
本来のお前の心は・・弱いままだ。だから大罪人の俺を殺せない・・殺す勇気が無い・・!」
「別にそんなんじゃ・・」
「覚醒しないと戦うことすらできない・・・その心の弱さ、いつか命取りとなるだろう・・。」
「・・・・。」
その時だった。城から“ある人物“が田天らのいる街の中心部に飛んできた。
吹き飛んできたその人物は地面のコンクリートに激しくぶつかり、数バウンドしてから田天の目の前まで来て倒れこむ。
それは田天の知らない人物であった。しかし後ろで捕まっているバイスは彼を知っていた。
「ベリア・・。」