輝く無数の光の矢
田天は手を広げ目を閉じる。その彼からは一切の魔力が感じられない。
「うわあああ来るぞ!」
「アムールが・終わる・・!」
全ての兵士たちがドラゴンの攻撃に恐怖し絶望するなかで、カレアは不思議な行動にでる田天を見ていた。
(田天・・どうする?この状況で、アムールを救い出せるの・・?
お願い・・私はあなたにかけるわ・・!)
目を閉じ田天に祈りを捧げるカレア。全ての望美を彼に託して。
ドラゴンの放った火球が街に当たる間近、田天の目が開いた。その目の輝き、それは田天がここに助太刀に来たときと同じ、強い金の光によるものだ。
手を広げたその体勢のまま彼は“新たな技“を放つ。
「 “神鳴“ 」
街の地面、建物、街灯に車。アムールにある全てのものが光り始めた。今の田天と同じ金の輝きを放つそれらは、アムールの街を目映く照らす。兵士やカレア、バイスはそれらに目を奪われる。が、真の衝撃はまだ始まってもいなかった。
照らされた地面や物体から、何かが勢いよく放たれた。バシュっと音をたて飛び出したのは光の矢。いたるところにある“光る場所“から放たれる矢は無数に飛んでいく。直径二メートルほどのそれはこれまた金の光に包まれており、ただ一つ違う点はそれら全てが強い魔力を帯びているもいうことだ。
矢はドラゴンの火球にぶつかるとそれを貫通し進んでいく。貫通された火球は勢いを無くし、街に直撃することなく消滅していった。
アムール全体という超広範囲から放たれる無数の矢に、ついにドラゴンの攻撃は一つ残らず防がれてしまった。
「・・・!」
唖然とするバイス。まわりのドラゴンたちもなにが起きているのか分かっていないようだ。
しかしそんな彼らに向かって光の矢は突き進んでいく。火球に当たろうが、上空まで飛行しようが一切勢いを落とさない矢たちはドラゴンたちに襲いかかる。
危険を感じたバイスは、手で空に魔方陣を描く。そしてドラゴンたち全員を囲めるほどのバリアを完成させた。
(よし、これでとりあえずは防げる。
問題はこのあとだが・・)
次の行動を考えるバイス。しかし無情にも無数の矢“神鳴“はバイス作のバリアにヒビを入れ、そして破壊してしまった。
(なっ・・に!!)
間近まで迫る矢。その速さ、その魔力、そしてその輝きにバイスは思考を停止させてしまう。
無意識に自分にだけ強力なバリアを張るバイス。黒く禍禍しい魔力で構成されたそのバリアは、さきほどのものに比べても分厚く強固に見える。
彼は自分の身だけを守るために、限界まで魔力をそそいだのだ。
矢はついに、彼らに被弾した。ドラゴンたちは己の放った火球と同じ運命をたどるように、矢が貫通すると消滅していった。
大量にいたドラゴンたちはみな断末魔とともに次々と朽ち果てていく。
主人であるバイスはバリアの中で必死に魔力を消費し、やってきた矢に対抗していた。
(ぐ・・くそっ・・・こんなはずは・・・・・!)
全ての矢が遥か上空まで飛んでいき星となった。
ドラゴンたちがいた場所には、一切ドラゴンは残っていない。そこには半壊した黒色のバリアが浮いている。
そして壊れたバリアの中から、生き延びた魔法使いがボロボロで出てきた。