サタン・スタイル
フレイラの体のまわりを「闇」が駆け巡る。ぐるぐると竜巻のように動くその「闇」は行動範囲を広げていき、ベリアを飲み込んだ。
飲み込まれたベリアには特にダメージは無かったが、視界は真っ暗になっており何も見えない。
(ふむ、視界を奪う技か。
フレイラの攻撃など余裕で耐えられる。目が使えなくとも攻撃を耐えて耐えてチャンスをうかがえば、いればいずれやつを掴まえられる。
そこで強烈な一撃をぶちこめば・・俺の勝ちだ。)
ベリアは暗闇の中で構えをとる。そして魔力を高め、パワーと耐久力を底上げする。
精神を整えると、どこかにいるフレイラに話しかけた。
「いつでも来いフレイラ。貴様の姑息な手など、通用すると思うな。」
「そかそか・・
なら行かせてもらおうかな、サタン・スタイル・・解放!!」
フレイラの声が聞こえたと思ったら、暗闇の中に赤い光が二つ灯った。
ベリアはそれが彼女の目だと判断すると、そちらを向いて改めて構えなおした。
(フレイラの魔力を感じるんだ・・そしてあの赤い光を目で追え・・そうすればやつをとらえられる。)
ベリアがそう思った瞬間だった。フレイラが莫大な魔力を解放し、広範囲にその黒い魔力を撒き散らし始めた。
ベリアがその魔力に驚いていると、
気づいたら彼の顔面をフレイラの拳がとらえていた。魔力や目で追えなかったベリアでも、それが拳の感触であることは分かった。轟音をたてるほどの凄まじい威力。
「かはっ・・!?」
「まだだ。」
ベリアに攻撃を打ち込んだフレイラは、次の行動にすぐさま移った。
殴った腕を戻し、その場からバシュっと消えた。
痛みを感じ、さすがにひるむベリア。赤い光を目で追おうとするが、全く捉えられない。
二撃目の攻撃が放たれた。蹴りで繰り出されたフレイラの攻撃はベリアの脇腹に見事に決まり、衝撃波が発生するほどの威力で彼にダメージを与えた。
その間まだ一秒も経っていなかった。ここまでわずか零点数秒の出来事。
(はあああああ!!)
危険を感じたベリアは魔力を最大まで解放し耐久力を上げた。
しかしフレイラの三発目の攻撃が彼の腹を強打すると、彼は顔を歪めた。
(なんだこれは・・!?
認めない・・こんな小娘に負けるなど・・!)
四発目の攻撃はベリアの顎をとらえ、彼を背後の壁まで吹き飛ばした。
そして五発目で彼を床に叩きつけ、その床を崩壊させた。
まだ一秒経っていない。フレイラの攻撃はさらに続いた。。。
その約五秒後、フレイラの動きは止まり彼女はその場で立ち尽くしていた。足は若干震えており息も荒い。しかし彼女はまっすぐな目で前を見ていた。
(やはり五秒が限界か・・。
サタンスタイル・・暗闇の中、いかれた魔力を武器に敵にひたすら打撃を加える私の最終奥義・・。
手応えはあった・・強烈なのを、たしかに全発ヒットさせた・・。
これでダメなら・・・私は・・・・。)
彼女の視線の先の煙がやっと薄まった。
そこには二本の足でしっかりと立つベリアがたしかに存在していた。
「化け物め・・・。」