脅迫状の送り主
アムールの街の兵士たちは困惑していた。街の外で起きた爆発、あれはいったいなんだったのか。外ではなにが起きているのか。外の兵士に連絡を取ろうとしてもつながらず、ざわつく街の中。
住人たちは自分たちの家に待機しているが、それでも不安はつのる。そんな状況で、マーカスの代わりに配置されたカレアは自分がなにをすべきか考えた。状況を把握し兵士たちを落ち着かせる方法。結局彼女には一つしかおもい浮かばなかった。
「みなさん!私が外に出て原因を調べてきます!みなさんは街の中を守っていてください!
すぐに戻ってきますから!!」
カレアの発言で兵士たちの不安のざわめきがなくなる。そしてところどころから「良かった・・」「頼みます!」などの声が上がりはじめた。カレアはそれから魔力を目いっぱい解放し、彼らにそれをあえて感じさせる。彼女の魔法使いとしての魔力はかなり優れており、特に魔法を使わなくてもその強さを兵士たちは容易に感じ取ることができた。
「か、勝てるぞ!おれたちは勝てる!」
「ああ!いけるぞ!」
「どんなやつでもかかってきやがれ!」
兵士たちの活気が高まり、むしろ爆音がなる前よりもやる気に満ちている。
「さぁ!この町を必ず守りぬきましょう!」
カレアの掛け声に兵士たちは「オオオオ!!!」と大きく返す。カレア自身も周りに鼓舞され、スイッチが入った。そして堂々と街の外に出た。
「なんだこれは・・。」
カレアはその惨劇を目にした。地面には大きな爆発の跡。その周りには兵士たちがみな倒れている。先程の爆発がなんだったのかは分からないが、充分にその威力は想像できた。
「ん?あれは・・」
爆心地から少し離れたところで、誰かが座っている。カレアからは背中しか見えなかったが、その特徴的な後ろ姿ですぐに分かった。
「バイス・・?」
「おぉ、カレラか。街の警備はどうした?」
周りで兵士たちが倒れているというのに、かなり落ち着いた様子を見せるバイス。フランクに話しかけてくる彼の態度をカレアは疑問に思ってしまった。
「爆音の原因を調べるために私だけ出てきたのよ。
てかあなた、なんでそんなに平然としていられるの?仲間がみんな倒れているのに。」
「なんでって・・そりゃあ当たり前だろ。」
バイスは左手を広げ、そのまま自分の左側に向けた。そして左手が光ったと思ったら溜め動作無しで手から光弾が放たれ、その弾で爆発を起こした。そこに倒れていた兵士たちは吹き飛ばされ、気づくとそこにも爆発の跡がくっきりとできていた。
「仲間じゃねーからな。」
不適な笑みを浮かべるバイスに動揺するカレア。無意識のうちに彼と距離をとる。
「ど、どういうこと?裏切ったの・・?」
「裏切り?違うな。俺はお前らを仲間だと思ったことは一瞬たりともない。
そもそもアムール王に脅迫状を送ったのは俺だよ。」
「なっ!?」
「驚いたか?無理もないよなぁ・・一日だけとはいえともに戦ってくれる仲間だと思っていたのに、実は今回の敵だったんだからなぁ。
俺は悪魔軍特別竜騎兵のバイスだ。人間だがその竜使いの腕と派手な爆発魔法を見込まれて悪魔軍に加入した、期待のエース。ちなみに槍なんて全く使ったことない。」
たしかに彼は持っていた槍をそこの地面においたままにしている。一気に緊張感が増すカレア。心を落ち着かせるよう意識して、魔力を解き放つ準備に取りかかった。