真相を求めて
バジルは息をひきとった。アロマはやっと会えた父親がこんなにも早くいなくなってしまったことを受け入れられず、ひたすら声をかける。その無意味な行いに、周りの村人たちはいたたまれない気持ちになり、目をそらす者もいた。
そんな中、田天たちはバジルが残した言葉に疑問を抱いていた。ルシフェルとアロマの母親の関係、その二人の間に何があったのか、それを考えていた。田天はそれらを知ってそうなマルクとサラのほうをチラッと見る。しかし二人とも田天と同じように考え込んでいる反応をしており、特になにも知らなそうである。
(いったいどういうことだ・・?)
そんなふうに思っていると、目の前のアロマがようやく父親の死を受け入れたのか、泣き崩れた。田天はそれを、険しい表情で見つめることしかできなかった。
それから数時間後、村人やヤマタノオロチ様の協力のもとバジルの土葬が完了した。田天らは宿屋でしばらく休んだあと、アララを出る仕度を始めた。村には平和が訪れ、ヤマタノオロチ様は部下の魔物たちとやるべきことを果たしに向かうことに。そしてアロマは少しの間だけであったが父親と話すことができた。結果としては、田天たちはこの村を救った。そう思うことにし、田天はバジルの死を乗り越えることにした。
(これで、良かったんだよな・・。)
「さ、行くか。」
フレイラがドライな感じでみなに声をかける。サラとマルクはこくんとうなずき、窓の縁に座っていた田天もふりむいて軽くうなずいた。フレイラはギルデガールで購入したドクロのシャツにジーパン、サラも白のワンピースを着て宿屋を出る。そんな彼女たちを見て田天は思った。『自分はこの仲間たちを裏切らず、仲間を信じて進んでいこう』と。
アララの入り口にはアロマとバンパが待っていた。アロマはすっかり立ち直り、普段の優しい笑顔を見せてくれている。
「みなさん、本当にありがとうございました。」
深々とお辞儀をするアロマの前にフレイラが立つ。そしてその背中をポンポンと叩いた。
「いいってことよ。ルシフェルの件も任せておけ!」
「・・え?ルシフェル?
あなたたち、ルシフェルって人のこと知っているんですか!?」
目を丸くしてフレイラに詰め寄るアロマ。雰囲気とは逆の強引な一面に、あのフレイラが怯む。
「お、おう・・田天から聞いてなかったのか?」
「そういえばルシフェルって名前は言いそびれてたなぁ。」
田天は頭を掻きながらそっぽを向いていた。それをジト目で見る仲間たち。
そんな中、アロマはうつ向いて何かを考えていた。彼女の考えをすぐに察知したバンパは、声をかけてあげた。
「行って来なさい、アロマ。」
「バンパさん・・?」
「お母さんのこと、確かめたいんだろう?彼らの旅に、同行させてもらうといい。」
優しく微笑むバンパに、アロマはうれしい反面困り顔になる。
「でもパン屋は・・。」
「私がなんとかするよ。だから安心して行ってきなさい。」
「バンパさん・・ありがとうございます!」
再び深い礼をし、ふりかえるアロマ。田天たちはそこできちんと、彼女を待っていた。
「これからもよろしくお願いします。アロマさん。」
「はい!こちらこそ!」
バンパに別れの挨拶をし、フレイラを先頭に一人増えた田天パーティは次の場所へ向かった。彼らとともに笑っているアロマを見て、バンパは心の中でエールを送るのであった。
(頑張りなさい、アロマ。
だがパン屋はこれで私一人か、バイトを雇わないとさすがにキツいぞこれは・・。)
付け加えて、自分にもエールを送るバンパであった。