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目覚めたら堕天使ルシフェル  作者: キメラテック
生け贄とヤマタノオロチ
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父と娘

アロマは黙って、悪どい顔で笑っているバジルを見つめていた。田天やフレイラたち、そして村の人たちはその様子をただ黙ってみることしかできなかった。

やっと会うことができた父親。しかし彼はとんでもない真実を背負ってやってきた。しかも反省の色は見られず。

そんな父親に娘がどう出るのか、誰も予測ができなかった。


地に膝をつきアロマを見上げるバジル。先程の戦いのせいで、口からの流血も見える。そんな彼を、アロマはただ見つめていた。そして、


「お父さん・・



おかえりなさい。ずっと、ずっと待っていましたよ。」

娘は父親の前でかがみ、そっと抱きつく。突然のことに驚くバジル。ふと我にかえり横を見るとそこには、涙を流した娘の横顔があった。泣きながらも優しく微笑んでいるその顔に、彼はたしかな“懐かしさ“を感じていた。

(アロマ・・・お前は・・・・。)


腕を背中にまわしているアロマに対し、バジルは動けないでいた。それは疲労とダメージのためではなく・・

「アロマ、お前は分かっているのか?俺は悪人なんだぞ?さっきの話は全て本当のことで・・。」

「分かっています。あなたはこれから罪を償わなければなりません。

でも今は、とりあえず喜ばせてください・・。

生きていると、信じていました・・お父さん・・。」

「・・・。」

バジルは自分の目から、涙が流れていることに気がついた。そしてやっと、手を娘のほうにまわした。

「ごめん・・・ごめんよアロマ・・・こんな父親で・・・ごめん・・。」

その光景を田天は、魔力を空にして見ていた。正直なところ殺そうか迷っていたが、目の前の親子を見て自分の行いが正しかったと思えた。



「そ、そういえばその腕、大丈夫ですか?」

「ああ、派手にやられちまったよ。あいつにな。」

チラッと田天を見るバジル。その瞳にはもう“闇“は感じられない。

「だが、感謝してるぜ。田天。ありがとよ。ここに連れてきてくれて。」

「・・はい。」

「この怪我は大丈夫だ。一応俺もエルフなもんで、それなりの治癒魔法を使ってるからな。


さてアロマ、お前に言っておかなければならないことがあるんだ。」

優しく頬笑むバジルに、アロマは涙を拭って答えた。

「な、なんでしょうか?」

「おそらくだが、お前の母親は生きている。」

「え!?」

それから彼は、アロマの母親について語りだした。



アロマの母親の名はミント。数年前、ミントとバジルはエルフ・バレーという谷で出会った。当時からバジルはエルフにしては破格の才能を誇っていたがミントはそれ以上で、特に弓に関しては右に出る者はいなかった。負けずぎらいだったバジルはミントを目標に努力をし、またミントはそれに負けないよう努力し、そうやって互いを高めあっていくうちに、恋が芽生えたのである。


その後、彼らに子供ができた。名はアロマ、ミントが名付けた名だ。バジルたちは赤子のアロマを含めた三人で仲良く暮らしていた。

しかしある日、エルフ・バレーに不吉な噂が流れてきた。それは、近々エルフ・バレーに『アルゴラ』が侵略してくるというもの。アルゴラは狂暴な肉食の魔物で、特にエルフは好物中の好物という情報は彼らエルフのなかでは常識であった。アルゴラの戦闘力は凄まじく、エルフ・バレーが一丸となってもまず敵わないと言われていた。


そこでミントは谷を代表し、アルゴラを退治することにした。その際、谷のエルフたちを他の場所に引っ越させることにし、バジルにはアロマとともに他の場所に移るようお願いしていた。その場所こそがここアララ村である。

当時のバジルは彼女一人に任せることに不安を抱いていたが、幼いアロマのこともあり、またミントが提示した“ある作戦“を信じ、アララに向かった。

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