生き方の違い
「ヤマタノオロチ様は部下の魔物の軍勢とともにこの村にやってくるらしいのです。
そして少しでも反抗の態度を見せるとその場でアララを攻撃し消し去ってしまうとも言われているみたいです。
ヤマタノオロチ様と周りの大軍を一瞬で葬らなければ、この村は私たちのせいで無くなってしまいます。残念ですが私たちが協力するという選択肢は、ありません。」
「こ・・光刃があるじゃないか!あれなら大軍だろうが龍だろうが一瞬で・・。」
田天の反論を、サラたちは悲しい目をしながら聞いていた。それを見て田天の勢いも止まってしまう。
「成功するか分からない技にかけるのですか?もし空振りしたらその時は、“あなたのせい“でアララは無くなってしまうのですよ?」
「うっ・・。」
人に迷惑をかけたくない。これは田天が現世にいたときからずっと存在し続けてきた性格である。この性格は彼の場合かなり異常で、これのせいで行動力やら判断力やらが発揮できない場面が今まで何度もあった。
サラが放った言葉は田天の胸に深く突き刺さり、それ以上の反論が出てこなくなってしまった。
「田天さん、いいんです。お気持ちだけで十分ですから。
言ったでしょう?もう覚悟はできていると。」
肩を落とす田天にそっと寄り添うアロマ。死が決まっているとは思えない、とても優しい笑みを浮かべて話しかけてきてくれた。
田天はそんな彼女を見て、自分の弱さと彼女の強さを思い知らされた。
その夜、一行はアララ村に泊まることにした。サラのお金を使い宿屋を借りて休む。田天は部屋の中でずっとおとなしくしていたが、いきなり立ちあがり外へ出た。
そして、アロマのパン屋に向かった。
パン屋はすでにこの時間はやっていないのだが、ドアをノックすると、中からバンパが開けてくれた。田天を見るとにっこり笑って中に入れてくれた。
テーブルに腰掛け話し合う二人。アロマはすでに寝てしまっているようだ。
「もう気づいているとは思うけど、アロマはエルフ族。両親もね。
しかしあの子は、赤ん坊のころに母親を亡くしてしまってね。ずっと父親に育てられてきた。
とても大きくて優しい父親はアロマの自慢だったみたいだよ。」
「・・・。」
「だがある日、その父親もいなくなってしまった。突然どこかに消えてしまったらしい。
それからあの子は親の助けも借りずに生きてきた。当時8歳くらいだったあの子には辛かっただろうね。僕がこの村に来たときにはすでにあの子は一人だったけど、悲しい顔ひとつ見せなかった。
あんなにしっかりしている裏には、そういう過去があるんだよ。」
バンパの話を、田天は黙って聞いていた。
現世での自分は、ずっと親に頼って生きてきた。すねをかじりまくっていた。もしも自分も両親がいなかったら・・思うと彼はゾッとしてしまう。
それなのにアロマは小さいときから一人で頑張っていた。生き方が全く違う。
それと同時に、納得がいかなかった。
(あんなに立派な人が・・死が確定しているなんて・・おかしすぎる、こんなのやっぱりおかしいよ。)