農業の村・アララ
田天たちがギルデガールを出て一週間。特にルシフェルや悪魔たちの情報が得られないまま旅は進んでいく。三日ほど魔物との戦闘になった場面があったが、ほとんどフレイラとサラが退治し田天は一匹も倒すことができないでいた。魔物の攻撃は効かないのだが、魔力0で放たれる田天からの攻撃も魔物に通用せず結局仲間に任せるといった形で毎回片付くのであった。
「田天、お前本当に光刃撃てないのか?本気でやってる?」
「や、やってるよ!やってるけど・・なんでだろう・・・。」
「先日あなたが戦ったニャムというゲル状の魔物。あれは全魔物の中でもワースト5の強さだと言われているとても弱い魔物です。あれすら倒せないとなると・・近いうちに死ぬかもしれませんね・・。」
「さらっときつい事言うね・・。」
とほほと肩を落とす田天を見て、サラはこめかみを指でかきながら背を向けた。ほんの少しだが顔を赤らめている。
「ま・・まぁ?いざとなったら私が守ってあげますけどね、それが天使である私の役目でもありますし・・」
「ほんとにちょろいな、こいつ。」
みなに背を向け小声で話すサラにあきれるフレイラであった。
その時ちょうど、マルクが遠くに”なにか”を発見した。彼は飛び跳ねながらそれを何度も確認する。
「おい!あそこに建物が見えないか!?
町じゃないか?一週間ぶりの!」
ゴブリンであるマルクがぴょんぴょん跳ねながら喜ぶさまに、他の三名は少し癒されていた。道中でほかのゴブリンとの戦闘の機会があったのだが、彼らは凶暴で目が血走っていた。対してマルクは見た目こそザ・魔物といった風ではあるが凶暴さは皆無で戦闘も全くできない。そこがマスコット感を生み、田天たちは安心感を得ていたのであった。
マルクが見つけたのは小さな村であった。村の入り口には「豊かな村 アララ村」と書いた木の看板が立ててあり、外から見ただけでも村ののほほんとした雰囲気が漂ってきていた。風に乗って良いにおいが田天たちの鼻まで届く。
「なんのにおいだろう・・ていうか、お腹すいてきたね・・。」
思えば一週間、ろくなものを食べていない。変な見た目の木の実や焼いた魔物の肉など、田天に関しては今まで食べたこともないようなものばかり口にしていた。
「よし、じゃあ今回は私が出そうじゃないか。ほれ!」
フレイラがカバンから硬貨を取り出し、それを四人分に分けた。そして仲間たちに与えた。
「それを使って好きなもの買ってきな。私のおごりだ!」
「へぇ、悪魔にも気遣いってあったんですか。覚えておきましょう。」
「うん、やっぱお前だけ返して。」
そんなやりとりの中、田天は手渡された硬貨を見つめていた。もちろん日本のものとは違う硬貨。でも金属でできていて丸い形という点は同じだ。
(これがこの世界の硬貨・・よし、大切に使うぞ!)
とりあえず四人は別行動をとり、食事の後に合流することに決めた。田天はさっそくアララ村の探索を始める。畑が多く、思った通りののどかな雰囲気。しばらくここで過ごすのも悪くないな、と考えてしまう田天であった。
大きな噴水を見つけた田天は、水面をのぞき込む。水は思っていたよりもかなり深く、底が見えない。
「凄いな・・底なし沼ならぬ、底なし噴水だなこりゃ・・あっ」
ついていた手を滑らせ、水にドボンと落ちてしまう田天。若干溺れながらも急いで陸地に戻る。
「はぁはぁ・・あっぶなー、俺泳げないんだよなぁ。沈んだら終わりだったよまったく・・・。
さて、そろそろ食事といきますか。」
ポケットに手を入れ硬貨をつかもうとする。が、硬貨が無い。どちらのポケットにも無い。
(あ~なるほど、さては噴水の底に旅に出たな・・?)
さっそく絶望する主人公。
こんにちは、作者です。
いつも読んでいただきありがとうございます。今回の章の構成はなんとか出来上がっていますので、一日に一回は更新できると思います。
ですので、これからも読んでいただけたら幸いです。
あと、おかしいところがあれば指摘お願いします。今の時点でいくつかありそう・・。