新たなる地へ
「さて、行くか。」
ここはギルデガールの町の入口。田天、マルク、フレイラ、サラの四名は今まさに町を出た。門を出て歩き出す彼らの顔は希望に満ちていた。ただ一人、サラを除いて。
「田天!」
急に田天を呼び、彼の前に立つサラ。そして素早く土下座の体勢をとった。
「すみませんでした!私がハーランドにお願いしたせいで、あやうくあなたを死なせてしまうところでした!」
「あー、そういえばそうでした・・ね。」
「ルシフェル様奪還のことばかり考えてしまい、あのようなことをしてしまって・・本当にすみません!!」
おでこを地面に叩きつけるほどの勢いで頭を下げるサラに、田天は動揺していた。数日前にここで自分を殺そうとした人と同じよう人だとはとても思えない。
田天はしゃがみこみ、サラに話しかける。
「たしかに凄いビビったし、死を覚悟したし、ちょっと恨みそうにもなったけど・・でも、おかげでちょっと成長することができたよ。ああでもしないと俺は変わらなかったかもしれないし。」
「田天・・。」
顔をあげたサラの目には少し涙がうかんでいた。少しドキッとしてしまう田天だったが、話を進める。
「そ、それにハーランドにああやって頼んだってことは、俺を信じてくれたってことだし・・そういうの久々だったから今考えたらむしろ嬉しいかな。
ありがとう、サラさん。だから気にしないでください。」
「・・・!」
その時、サラの心がトクンと揺れた。彼は自分の命を危険な目にさらしたサラを許すどころか、お礼を言ってきた。彼の優しさはサラの気持ちを癒すどころか、彼に対する見る目も変えてしまった。
顔が赤くなりとっさに後ろをむくサラ。
(私としたことが・・ルシフェル様という人がいながら、まさか私は田天のことを・・・)
「彼女は気づいてしまった。この気持ちは『恋』であると。」
「かってにナレーションしないでください。」
「ガハッ!」
ふざけたナレーションをつけたすフレイラの横腹を小突くサラ。もだえ苦しむフレイラを無視し、田天の方へ向きなおす。
「田天、これからは『サラ』と呼び捨てにしてくれてかまいません。
あなたの仲間として、懸命に努力するつもりですので、改めてよろしくお願いします。」
深々と頭を下げるサラに、田天とマルクは顔を見合わせて喜んだ。
「こちらこそ、まだまだ未熟だけどよろしくね、サラ。」
「未熟って、光刃を使えるようになったお前はもうこのパーティー最強だろ?」
ハハハと笑いながら田天をポンポンと叩くマルクに対し、田天は目をそらした。一同が不思議に思う中、田天の口から衝撃の一言が飛び出した。
「いやぁ~それがあのあと何回か光刃の試し撃ちをしようとしたんだけどさ、全然出ないんだよこれが。」
「・・へ?」
「やっぱりなにか知らない発動条件があるのかな?それが分かんないから、次いつまた成功するかも分からないんだよね~ハハハ・・。
だから正直、次の戦闘のときは勝てる気がしないんですよね~・・
てなわけで俺の護衛、よろしくおねが・・」
「ふざけんじゃねー!!」
フレイラに強めのソバットを喰らう田天。激しくぶっ飛とんだ先でも彼女やサラ、マルクにボロクソに言われてしまう。
「今日までの話はなんだったんだ!」
「やはり私自らが殺しにかかる必要がありそうですね・・。」
「いやいやサラさんあなたさっきまでの謝罪はなんだったのかな・・?」
「それとこれとは話が別です。覚悟。」
「うぎゃああああ!!」
光刃を駆使し闘神に勝利した田天だったが、彼はまだまだ弱いままのようだ。しかも結局ギルデガールでは仲間を増やすことは出来なかった。
だが仲間との絆は確実に強くなり、町に入る前の頃に比べ、ほんの少しだが不安が消えたようだった。
もちろん田天以外の三名にも互いに対する信頼や友情が芽生えだしてきていた。人間、魔物、悪魔、天使というバラバラな種で構成されたパーティー。しかし今の彼らの仲間意識は、それを全く感じさせていない。
彼らはその確かな気持ちを胸に、新たな地へと歩を進めるのであった。