敗れた闘神
「はぁ・・はぁ・・」
もはや立ち上がる力すら残っていないハーランド。血で視界が悪くなっているが、田天が目の前に立っていることは分かった。
(なんだこいつは・・?つよ・・すぎる・・・。
絶対的な耐久力を持つ私が、たった一撃で・・・。)
田天が放った光刃。右手の魔力が光の刃と化し、それがハーランドを襲ったのだ。ハーランドは必死で防ぎなんとか刃を上空へとそらしたのだが、そのダメージは計り知れないものであった。
田天は攻撃を終えた今もなお凄まじい魔力を帯びていた。何人も近寄らせない、そんな雰囲気を醸し出していた。
「田天のやつ、やーっと成功したか。ま、でもあいつにしちゃ早いほうかもな。」
腕を組みうつむくフレイラだったが、その顔は嬉しそうだ。しかし、マルク達の反応が無いことに疑問をもった彼女は隣をチラッと覗く。
マルクもサラも口を開けたまま固まっていた。そして気のせいか、両者の目にはかすかに涙が見えた。
「ルシフェル様・・?」
二人の口から出た台詞は同じであった。「?」と頭の上に疑問符を浮かべたフレイラは、改めて田天を見た。
たしかに今の彼の姿は昨日までの田天というよりも、帰ってきたルシフェルといったほうがふさわしい。それでも一歩下がるフレイラ。
「いや、あれは田天だよ?」
「分かっている、分かっているが・・」
その先の言葉が出てこないマルク。サラも続く。
「あの魔力とたたずまい・・そして内面からあふれでる自信。とても田天とは思えません・・。
私が知る中であのような絶対的なお方はただ一人・・ルシフェル様・・。」
サラの頬を涙がつたう。やれやれといった表情で顔をそらすフレイラであった。
「まだだ・・ルシフェル、まだ私はやれるぞ・・?」
朦朧とする意識の中、ルシフェルにまだ挑もうとするハーランドを、田天は黙って見ていた。あきらかに、ハーランドはもう戦える状態ではない。
「せっかく・・こんな化け物みたいなやつに出会えたんだ・・。まだ戦いたい・・こんなチャンスは・・滅多にないから・・カハッ!」
血を吐くハーランドに、黙って見ていた観客が口を開いた。
「よく頑張った!!もう十分だよ!!」
「そうた!!良い試合だったぞー!!」
「これ以上やったら死んじまう!やめてくれー!!」
彼らはハーランドの戦闘再開に否定的であった。誰の目から見てもこれ以上の戦闘は無意味だし、ハーランドの死に関わることも分かっていた。これからのハーランドに期待する彼らからすれば、これ以上の戦いは避けてほしかった。
その時、田天の体から一切の魔力が消えた。先ほどまでの圧力も無い。そして無言でハーランドに歩み寄る。膝をついた彼に田天は、深々と頭を下げた。
「た、対戦ありがとうございました!」
そこにルシフェルの威厳はなかった。もう今の彼は、いつもの田天に戻っている。
観客席のフレイラたちを見つけた田天は、ステージから降りてそこに向かう。一応まだ試合中なので、田天は場外負けという形になってしまった。「し、試合終了・・勝者、ハーランド・・。」と、状況がよくわかっていない司会者がつぶやいた。
田天の後ろ姿でなにかに気がついたハーランド。粉々に砕けたマクリアンを見て、改めて田天のほうを向く。
「おい!・・お前、ルシフェルじゃないな!
本当の名は・・お前の本当の名は・・なんという?」
「・・田天です。」
「田天・・いつかまた私と戦え・・そしてその時は必ず・・私が勝つ・・!
「・・よろしくお願いします!」
「ふふ・・・こちらこそ、対戦ありがとう・・ございま・・・」
ハーランドはついに力尽き、その場でうつ伏せに倒れこんだ。全身ボロボロの彼だが、その顔には笑みがこぼれていた。
いつかキャラクターの絵を載せたいなぁと思っています。でもアップの仕方が分からないという・・。