堕天使の力
「・・・。」
声が出ない観客たち。彼ら全員、目の前の田天の威圧感、存在感、そして絶大な量の魔力に押し潰されそうになる。そして犬の仮面をつけ、天使のような変わった服装をしている彼の様がギャップとなり彼らやハーランドの思考を狂わせる。
(本当に、何者なんだ・・?)
改めて闘気を高め、突撃の準備をするハーランド。今の彼は緊張や興奮、期待などさまざまな感情が入り交じっている状態であった。まだその真の力を体験していないにも関わらず、目の前の男の強さを肌で感じる。
「ミスターL、全力で・・殺し合おう。」
ハーランドがその場に爆音を残して消えた。そして田天の斜め後ろに回り込み、マクリアンを横に振った。気配を殺し、本気で田天を獲りにいく。
キィィンと高い音がした。剣となにかがぶつかり合い、斬撃は止められた。ハーランドはその“なにか“を見る。
なんとそれは、田天の人差し指だった。魔力が込められたその指に、聖剣がついに止められたのだ。
「な・・に・・!?」
剣を瞬時に構え直し、次の一撃を繰り出す。しかしまた指で止められる。その次も、そのまた次も。ハーランドの剣撃はいっさい通用していない。
「どういうことだ・・こんなことあるわけが・・」
ハーランドの感情に、恐怖や不安が生まれた。闘神である自分の攻撃が効いていない。彼の脳内をよぎる「敗北」の文字。
「負けてなるものかあああ!!」
田天の腹に回し蹴りを繰り出すハーランド。田天はそれも冷静に対処し手で受け止めて見せた。しかしハーランドは足を捕まれたままの体制で剣に闘気を込め田天を下から切りあげた。
剣は田天の顔面をとらえ、防がれることなくハーランドの斬撃は彼を切り裂く。
犬の仮面が真っ二つに割れた。その場にカランカランと落ちた仮面の破片。田天の顔には小さな傷ができていた。
田天の顔がばれたことにより、それを見ていた観客たちがざわめきだした。
「あれ・・もしかしてルシフェルじゃね?」
「あの数日前にこのへんで暴れてたっていうあいつか、たしかに顔がそっくりだ。」
「やばくないか?もし本物だとしたらこのあと俺達・・殺される?」
「静まれえええ!!!」
ざわつく会場を一言で静止させて見せたハーランド。そして彼は堂々と田天に歩み寄る。
「なるほどな。お前の正体はあのルシフェルか。私の攻撃が効かない理由がやっと分かった。」
軽く微笑むとハーランドは観客たちのほうを向いた。
「お前たち!安心しろ!
この悪人は私、ハーランドが退治してやる!!」
剣を高らかにかかげるハーランド。その言動に、観客は沸き立つ。
「いけええハーランドおお!」
「お前の力をみせてやれええ!」
ハーランドコールも始まり、会場に一体感が生まれた。ハーランドはありったけの闘気をマクリアンに注いだ。
「こんな興奮は久しぶりだ。礼を言うぞ、ルシフェル。」
軽く会釈をしたハーランドは、小細工なしの正面突破で田天に攻撃を仕掛けた。闘気の化身と化した彼は全力で聖剣を振るった。
「死ねえええええ!!!」
無情にも弾かれた聖剣マクリアンは、宙を舞った。渾身の一撃を弾かれ動きが一瞬止まるハーランドに、田天はしっかりと焦点を合わせた。そして、
「 “ 光刃 “ 」