始動
「たあああ!!」
ハーランドが攻撃を再開した。マクリアンに闘気を込め、体全体にも闘気を張り巡らせて田天に特攻する。
ハーランドが繰り出している攻撃はただの斬撃。だがその威力や速さは尋常じゃなく、攻撃の衝撃で観客席にまで風が伝わっていた。
田天は必死でその攻撃をさばく。もちろん完全によけることはできず、魔力を集結させた手を使い攻撃の軌道をずらす。
田天の体にはところどころに出血が見え、傷はどんどん増えていった。
「はーっはっは!!避けてばかりでは勝てんぞ!」
「・・くっ!」
本気の本気でかかってきているハーランドに、余裕が全くない田天。
(やばい、死ぬかも・・でも、諦めないぞ。
もとの世界ではなにごとにもいつも不安があった。いつもネガティブだった。失敗したらどうしよう、怒られたらどうしよう。こんなことばかり考えてた。
でもそれじゃダメなんだ。生きてたら必ず壁にぶつかる。その壁を超えるためには、こんな調子じゃいけないんだ。
この試合もそうだ。ここを超えないと俺は、永遠に、ずっと、死ぬまでくそやろうのままだ・・。
変わりたい・・変わるんだ・・俺は強くなる!ルシフェルのように!!)
『お前が成長することが大切なんだ』
『私はあなたを信じています!』
『これはお前が変わるための戦いなんだ!』
仲間たちのセリフが脳内に蘇る。まだ出会って間もないのに、こんな自分を思ってくれている仲間たち。その彼らに励まされ自分はいまここで戦っている。田天はハーランドの猛攻をさばきながら冷静さを少しずつ取り戻していった。
『失敗を恐れず、失敗してこい』
(行け、田天。お前の限界を見せてやれ・・!)
自分にそう言い聞かせる田天。
その時であった。莫大な魔力が田天の内側から溢れだした。同時に青白い光が田天の周囲に、彼を囲むように出現した。光はやがてばらばらに散らばり、上空へと飛散した。
会場中がどよめく。ハーランドもなにが起きたか分からず、とりあえずまた田天と距離をとった。
「やっと、やっと見られそうだな。やつの眠っていた力を。」
フレイラは期待の目で田天を見つめる。試合開始から落ち着いていた彼女だったが、今は興奮が隠せず、目を輝かせていた。
「なにをした?」
ハーランドは冷や汗をかきながらも冷静に、堂々と田天に語りかける。田天の体は青い光に包まれた状態で、ほとばしる魔力をまとっていた。先ほどまでとは雰囲気がまるで違う。
ゆっくりと顔をハーランドに向ける田天。その顔つきもまた、先ほどに比べて凛々しく、そして強気に感じられた。
「魔力を全て解放した。
さぁ試してみようか・・今の俺の、本当の強さを・・!!」