反撃
ハーランドは田天のほうへ突進したまま聖剣マクリアンをかまえ、攻撃圏内に入ると全力で降り下ろした。田天は背を向けたまま、目をつぶったまま動かない。彼の死を悟る観客たち。
(終わりだ・・!)
会場に斬撃音が響く。ステージの上で、血が舞う。
口を開けたまま動かない観客の目線の先に、田天がいた。
彼はたしかにハーランドに斬られたが、倒れずその場で、ハーランドに背を向けたまま立っていた。斬撃を終えたハーランドは、目の前で田天が立ったままであるという事実に驚きを隠せない。
(・・・!?)
なんと田天は、マクリアンの刃の部分を素手で掴んでいた。ハーランドはそれに気づくやいなや、それを引き離そうと引っ張った。しかしびくともしない。全く動かない。
(なんだこの力は・・私が力比べで、勝てない・・!?)
田天は振り返りハーランドを見た。その目にいっさいの迷いは無く。
マクリアンを左手で掴んだまま右手を少し上げ、魔力を集めた。青く光る右手を見て、ハーランドは危険を察知した。
いったんマクリアンを手放し、田天と距離をとるハーランド。構えをとり、田天の右手をじっと見る。
(だいたい最初からおかしかった。私は始めから本気の攻撃を繰り返し、そしてたしかにその斬撃はやつにヒットしていた。
普通なら一撃で真っ二つになるところだが、なぜか軽い傷で済んでいる・・。
剣を掴む力も尋常じゃないし、やつはいったい何者だ・・?)
「“光刃“」
「!!」
青い右手を振り切る田天。身構えるハーランド。
しかしなにも起こらない。会場中が静まりかえった。
「なにが起きたんだ?」
「いや、なにも起きてないよな?」
田天の光刃はまたしても失敗に終わった。肩を落とすマルクとサラ、そして先ほどからずっと落ち着いているフレイラ。その瞳に写る田天は少し悔しそうな顔をしていた。
「くっそ・・今ならいけると思ったんだけどなぁ。」
光る右手を見つめる。たしかに魔力は感じられるのだが、なぜか光刃が出ない。
その時だった。ハーランドが弾丸のように田天に突っ込んできたのは。
注意していなかった田天はハーランドの拳を腹にもろに喰らい吹き飛ばされた。そのひょうしで手放してしまったマクリアンを、ハーランドはパッとキャッチした。
「おかえり、マクリアン。
ミスターL、命がかかった戦いの最中にはったり技なんてなかなか面白いことやるじゃないか。
あまり私をなめない方がいい。私の攻撃があまり通用していないカラクリは分からんが、出血しているということは少なくともダメージは受けているということだ。
ならば死ぬまで切る。それだけだ。」
ハーランドの瞳から赤い光が発せられた。闘気をさらに高めた彼は、身を前にかがめた。獲物を狙う肉食動物のようなその様に、田天は少しビビってしまうが、きちんとハーランドの目を見続ける。