圧倒的な闘技
大会会場のほうに向かうとやはり闘技の町、観客の人数も歓声もすさまじい。闘技場はスタジアムのようになっており、後方からでも試合の様子がよく分かる造りをしている。
「あいつがハーランドか。」
フレイラがそう発言する前から、一同はハーランドの姿を目に焼き付けていた。
観客全員が見つめるステージの上には、金の鎧を着て黒いマントをなびかせた戦士が立っていた。彼が闘神・ハーランド。背中までとどく黒髪に赤い目、そしてその右手には黄金に輝く剣が握られていた。剣がまとう赤い色をしたオーラを見て、フレイラとサラ、マルクに緊張が走る。
(なんておぞましい闘気だ・・!)
(目で見て感じるだけで分かる・・あの剣から放たれる一撃は並みの剣士のそれとは違う。)
(闘神・・その名の通りの実力者、というわけですか・・。)
「??」
やはり田天だけがその力に気付かないでいるようだった。とりあえず三人の顔色から、ハーランドの強さを感じた。
「さぁ!次の私の相手は誰かな!?」
ステージ上でハーランドが呼びかける。この日の為に鍛えていたであろう他の戦士たちは、目の前で繰り広げられる圧倒的な戦力による一方的な試合に恐怖し、なかなか名乗り出ることができないでいた。
「はっはっは!あまりの戦力差におじけづいたか!このまま誰も名乗り出ないのもあれだし・・そうだな、二人がかりでもいいぞ?
誰でもいい・・私を満たしてくれ!!」
手を大きく広げ、会場中にとどく声で叫ぶハーランド。その時、一人の男が名乗りを上げた。男は大きな剣を担ぎ、上半身裸でステージにあがる。
「俺様が相手だハーランド。このガレオ様がな!」
「ほうよくあがってきたな。ガレオよ、一人で大丈夫か?」
「ああ。お前さん、マスタードラゴンを倒したというのは本当の話か?」
「本当だぞ。しかも二体。」
「・・やっぱりはったり野郎だ。人間であるお前がそんなことできるわけがねぇ。」
(人間とか虎とかはこっちの世界と同じなんだ。)
二人の会話を聞き、心の中で整理をする田天。
「ちなみにこのガレオ様はドラゴンを討伐したことがある。これお前と違って、事実だ。」
「ドラゴンねぇ、私なら目をつぶって片手だけで楽に始末できるよ。」
「ほざきやがれぇ!!」
突進するガレオ。ハーランドは手から剣を放し、その拳で突撃してきたガレオを床にたたきつけた。
「お前には剣すら使わない。もういい、去れ。」
「・・なんだと!」
ゆっくりと立ち上がり、剣を構えるガレオ。しかしハーランドは興味を無くしたようで、目の前のガレオを無視して会場を見渡していた。
「ほかにだれかいないか!」
「こ・・この野郎・・!こんどこそ・・!」
「ごめん、ちょっとかわってもらえるか?」
突進の準備をするガレオの前に、飛び入りの参加者が現れた。ハーランドが振り向くと、そこには女悪魔が立っていた。フレイラだ。
「あ、あいつ!マジで行きやがった!」
マルクは驚き、頭をかかえる。サラと田天は黙ってステージを見続ける。
「次の挑戦者は悪魔か。面白いじゃないか。」
「だろ?さぁやろう、早くやろう。」
「待て!まだこのガレオは戦えるぞ・・!」
よろめきながらうったえるガレオを、手刀で気絶させるフレイラ。そしてガレオをステージ外に運んであげる。
「ずいぶん優しい悪魔だな。」
「まあね。だが戦い方は優しくないから覚悟な!」
ニィと笑いピースサインを作るフレイラを見て、ハーランドも笑みを浮かべる。
「悪魔よ、名は?」
「フレイラ。よろしくな。」