天使の諦め
両社の刃のぶつかり合い。
それは規格外の衝撃を生むとともに、この異空間を大破した。
バリバリと剥がれていく黒い壁。気づくとサラたちは、先ほど自分がいた街に戻っていた。
「・・・・」
サラはすっかり元の姿に戻っており、技の反動で魔力も体力もごっそり落ちていた。
まわりがやけにおとなしい。いきなり街にサラたちが現れたのだから住民たちは驚いて声を出せていないのだ。
サージマエルは?
恐る恐る後ろを振り返るサラ。
そこには、先ほどまで自分と戦っていた天使が倒れている姿があった。
黒い空間は壊れ、彼が手に持っていた剣もバキバキに折れていた。そしてこの姿。
「私が勝った・・。」
安堵から全身の力が抜ける。
その場に座り込み、己の右手の手のひらを眺める。
「ルシファー、、うまくいったようですね。。」
「見事ですね、サラ・・・まさかこれほどまで強いとは。。」
左手に力を込めてググっと立ち上がるサージマエル。
ボロボロのその体。その目にはもはや光は無く。
「サージマエル、あなたの負けです。
できれば二度と、来ないでもらえますか?」
「はい、もう来ません・・・・
だって、ここで全て終わらせるのですから。」
「!?」
サラは今まで気づいていなかった。
自分の立っている地点に、魔方陣のようなものが描かれていることに。
身の危険を感じた彼女。自身の羽を使って逃げようと試みるも、動けない。
「これも私が作った守護術“虫籠の悪魔“。
魔方陣の中にいるターゲットの動きを封じる技・・魔方陣が完成する時間だけがネックですが、死んだふりをしてやり過ごせばこのように楽勝で決まる。」
「・・・くっ!」
サラの表情が歪む。
動けないうえ、魔力ももはや残っていないから無理もない。今の彼女はただ敗北を待つのみ。
一撃で決められなかったのが痛かった。
「ルシファーの一撃、正直ひやっとしましたよ。生身の私ならまず間違いなく一撃でしょうね。
ただ私は刃の衝突の直前に、“一瞬だけ衝撃を殺す防御術“を使っていたから助かりました。
もっともそれでも、かなりのふかでをおってしまいましたがね。
じゃあ、終わらせます。」
サージマエルは悪魔の笑みを浮かべながら無抵抗のサラを攻撃し始めた。
その方法は殴る蹴るの肉弾戦のみ。
防御術を使っていたとはいえボロボロの体のサージマエル。
それでも術を使わずサラをあえて格闘で痛め付けるのは彼の性格の悪さゆえのことだろう。
(田天、フレイラ、みなさん・・・・
すみません・・私はここで終わりそうです・・・このあと天界に連行されて、しかるべき「処理」をされる未来が待っているようです・・・
反撃どころか、もう叫ぶこともできません・・意識も・・飛びそうです・・・
本当・・・・・すみません・・・・・・)
ちょうどその時、座って話していた田天とアロマは二人とも嫌な予感がしていた。
悪いタイプの胸騒ぎがする。
二人はベンチから立ちあがり、この胸騒ぎの原因を探しに走った。