"ルシファー"
黒い空間が一気に青白く、そして眩く照らされた。
急に飛び込んできた予想外の光にサージマエルはひるんでしまう。
(なっ・・なにが起きた・・!?)
白い光の中に確かに見える、黒い人型の影。それがサージマエルの前に立っているのがかすかに分かった。
影はゆっくりとこちらに近づいているようで、そのたびに先ほどまでは感じられなかった異様な魔力が伝わってくる。
この空間は外部からの侵入者を絶対に通さないようになっている。
同時に、内部からの脱出も術者のサージマエルがその力を解かない限り不可能だ。
ということは・・
「サラ・・!!」
「守護術だけが天使の技だとあなどったあなたの負けですよ、サージマエル。」
青く光る兜、その隙間からはたしかにサラの瞳が見える。
ほとばしる力に負けないほどの強いまなざし、サージマエル一点をただ見つめる彼女の眼からは爆発的な魔力の波動が感じられる。
そしてよく見ると彼女の背後には、大きな翼が四枚。
その姿はまるで・・
(ルシフェル・・・!)
「一時的にルシフェル様の力をこの身に宿す、私の新たな技です。」
前は体のほんの一部しか変化しなかったこの技も、アグニとの修行や日々の研究、そして田天を間近で見続けることによってついに完成に至っていたのだ。
彼女の言う通り、この状態の力はほぼルシフェルに近づいている。
攻撃力、防御力、速さ、反応速度に瞬発力。そのすべてが疑似ルシフェル。。。
「私の負け・・?くくく、寝言は寝てから言ってもらいたいですね。」
サージマエルは指をパチンと鳴らすと、出現した黒い刀を握る。
彼の発言が確かなら、この刀は守護術とは違う技みたいだ。
「この刀は「魔族、または魔族の技」以外とぶつかるとその威力を100倍にはね上げる天使殺しの技・・「デビルズバリアンブレイド」。
事情が事情、生け捕りはやめです。ここで貴様は・・殺す!!」
天使とかけ離れた悪魔のようなまがまがしい眼をぎらつかせ、刀を構えるサージマエル。
「なるほど、守護術を封じても余裕だったのはこんな技を隠し持っていたからですか。」
「わかったときにはもう遅いですがね、裏切り者ぉ。」
一層スピードを上げたサージマエルは一瞬でサラの背後にまわると、容赦なく刀を振り下ろす。
空間が切り裂かれる音がはっきりと響く。サラは彼に背を向けたまま自らの剣を強く握った。
(このルシファーという技は全ステータスを上げる反面、強烈なデメリットがある・・
それは「攻撃回数が一回しか許されない」こと・・たった一度の攻撃で技は解除され、同時に体中の魔力をいっきに持っていかれます。。
だから、一撃で決めなければならない。
この一撃で、必ず・・!!)
両者の武器が、交差した。