友人
街の中腹にあるベンチに腰掛ける田天。
ふーとため息をつき組んだ指を眺める。
「どうしたの?」
彼の隣に腰掛けてきたのはアロマだった。
「フレイラとサラのこと考えてたんだよ。
もう俺たちが旅を始めてずいぶん時が経ったけど、唯一あの人たちは喧嘩ばっかりじゃん?
もういい加減にしてほしいよね。」
「うーん、そうだね・・」
田天の言葉に考えこむアロマ。指を顎にあててしばらく考える。
「私が思うに、やっぱり仲がいいがゆえの喧嘩じゃないかな。喧嘩するほど仲がいいって言うし。」
「でも出会った最初のほうから喧嘩してたよ?
本当は仲がいいとしても、俺的にはちょっと抑えてほしいよ。」
田天のつぶやきにアロマがふふっと笑う。
「田天はほんとうに優しい人なんだね。争いとかが嫌いなんでしょ?」
「そうだね。
元の世界でもそうでさ、どうやったら争わなくてすむか、どうやったら嫌われずにすむかって考えながら生きていたんだ。
怒られるのも嫌われるのもいやだから神経すり減らしながら生きてきた。心が弱すぎたからね。
だから他の人の争いもできれば見たくない。
それが大好きな仲間なら特に・・・。」
アロマは立ち上がり空を見上げる。
澄み切った青の中に二つの雲がぶつかり合い、混ざって一つになるのが見える。
「・・大丈夫じゃないかな?
本当に嫌いなら、もうとっくにどっちかがパーティを抜けてるよ。」
「・・・。」
「それに田天、あなたは誤解しているよ。
友人というものの意味を。
喧嘩しなければ、争わなければ仲がいいわけじゃない。
本当の友人というのは、外観じゃわからないものだと思うよ。」
街の肉屋で買い物を済ませたサラ。
大量に買い込んでぱんぱんになった手さげ袋を見ながらハァとため息をつく。
「これで当分は大丈夫でしょうが、ゴブリンの肉なんて買ってよかったのでしょうか?
フレイラが「絶対うまいから!」とかほざくから買いましたが、まずかったら無駄遣い確定ですからねぇ。そうなったら天の裁きを与えるだけですけどね。」
「天の裁きを受けるのはあなたです。」
サラの背後から聞こえた不気味な声。
急いで振り返ったサラの目の前には、見慣れない天使の姿が。
眼鏡をかけたその天使は異様な威圧感を放っており、天使とは思えないほどの邪気をまとっている。
天使としてのサラの細胞が震えているのが分かる。
強さとかそういうのではなく、この男の純粋な「悪」の気に対して。
「だ、誰ですか・・?初めて見かける天使ですね?」
「私はガブリエル様直属の部下、サージマエル。
裏切り者のあなたとルシフェルを捕らえにきました。
抵抗しても無駄ですよ?あなた程度の力じゃ私は倒せない・・。」