サバイバルの終演
「・・・・・・。」
青い空に白い雲。
そこを三羽の小鳥が並んで飛びさっていく。
気がつくとラザエルはこの光景を眺めていた。
ちらっと横を向く。
少し離れたところでジャキルがうつ伏せに倒れているのが見える。
気を失っているようだが、羅刹はしっかりと握りしめている。
(あぁそうか・・僕は、負けたのか・・・。
ママ、ごめん・・・。)
少し離れた場所、森の中でも特に木が少ない広場のようなスペース。
ここで今、二人の男が向かい合っている。
田天とマガルタだ。
いつの間にか斧を回収していたマガルタはそれをぶんぶんと振り回す。
その風圧で田天の長髪が揺れる。だが彼の表情は変わることなど無く。
「田天よ、あの二人を倒したらしいな。
助かったぜ。ありがとな。
さて、この時点で二つ用意してあるミートボールは俺らのものになったわけだが。。」
「・・・・。」
「戦う、よな?」
「当たり前。さっきの仮を返させてもらう。」
「分かったよ。。」
田天の強い目差し。
先程戦ったときの田天とはあきらかに異なる。
覚悟を決め、斧を降り下ろすマガルタ。
ザン!と斧が地に突き刺さった。
目の前には白い羽が一枚、ヒラヒラと舞っている。
そこからマガルタは「勘」「予感」を便りに、背後に全力の回し蹴りを繰り出した。
バチィ!
その足先は田天のこめかみにクリーンヒットし、あまりの衝撃に大地が揺れる。
さすがの解放田天もこの並々ならない威力の攻撃にはよろめく。
「ぐっ・・!」
「まだまだぁ!」
マガルタは左手で田天の首をガッと掴む。
固定された彼を、マガルタの右手の大斧が襲う。
「終わりだぁ!」
斧はむなしく空を切り、田天の姿も気配も一瞬で無くなっていた。
だが戦闘用に作られた人型兵器であるマガルタは、今回は田天の動きを見逃さなかった。
右後方に移動した彼の行動を。
「はぁぁ!!」
目線はそのまま、右手の斧を放し裏拳をその方向へ飛ばす。
が、それもまた空を切り。。
「なっ!?」
「上だ。」
上空から聞こえた声に反応し顔を上に向けたマガルタだったが、
彼の真上に移動していた田天はその顔に右拳を叩きつけた。
魔力を解き放った、全力の打撃を。
倒れこんだマガルタ。
ルシフェルの全力の攻撃をもろに喰らったにもかかわらずその原型を残したまま、意識もまだ保っている。
田天は彼の頭もとまで来て、
「さすがだよマガルタ、本気でルシフェルの力を使ったのにまだ倒せていないなんて。」
「いや、もう動けない。立ち上がれそうにない。
ほんとは、さっき向かい合ってその凛々しい面を見たときから・・いやもっと前、お前がまばゆい光の中俺たちの前に現れたときから分かってたよ。。
この勝負、お前の一人勝ちだってよ。」
天使、悪魔、戦士、そして堕天使によるサバイバルはここに終決した。
優勝者はすぅっと優しい顔に戻ると、ダーラ監督が用意した移動型カメラに向かってピースを送った。
「ったく・・心配させやがって」と不満を言いながらもたしかに安堵の笑みを浮かべるフレイラ。感動と憧れで涙を流すサラ。満面の笑みを返すカレアに、ホッと胸を撫で下ろすアロマ。
「っしゃー!!」と喜びを全力で表現するブレイズの後ろで、マルクは小さく微笑んだ。
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