『天の静まり』
ラザエルから一気に距離をとると、田天は勢いよく上空に飛び上がった。
そして空中でピタッと止まると、右腕に光を集結させる。勝負を決めに行くようだ。
「・・・・」
ラザエルは少し考えてから、宙に浮かぶ田天目掛けて直線上に飛行し始める。
そのスピードは田天ほどではないが、かなりの速度。
ぐんぐん距離を縮める。
そんなラザエルを前に、田天は冷静に技の発動を宣言した。
「“光刃“!」
田天の仲間たちは誰もがその勝利を確信した。
「・・・ん?」
違和感を感じる田天。
気づけば彼は地面に仰向けになって倒れていた。
「えっ・・?」
何がなんだか分からない。
先程までラザエルと対面しており、まさに光刃を発動するところだった彼が、なぜか地面に落ちているのだ。
彼からすればいきなり場面が変わったような不思議な感覚である。
ふと横を向くと、ラザエルがこちらを向いて立っている。
光刃を受けたような形跡はなく、むしろ余裕の表情を浮かべて笑っている。
「何が起きたから分かるかい?田天」
特に攻撃してくるわけでもなく、ただ言葉を投げ掛けてくる。
田天は口を開け、この訳が分からない状況を飲み込めないでいた。
「僕は優しいからね、特別に教えてあげるよ。
僕はたしかに格闘特化の戦闘スタイルだけど、それに加えて『ある能力』を持っているんだ。
僕の強さを何倍にも上げてくれる最強の能力をね。
能力名は『天の静まり』。簡単に説明すると、対象の「意識を止める」能力だよ」
「なんだと・・?」
とんでもない力の持ち主だと驚くも、その彼の説明でやっと納得がいった。
田天は光刃の発動のタイミングで意識を止められ、その間にラザエルにより地面に叩き落とされたようだ。
よく見ると体のあちこちに小さな痛みを感じる。止められた時の中で、何発か強烈な打撃をもらったのだろう。
「『天の静まり』により相手が止まる時間は約8秒。この間相手はなにも考えられない。攻撃も防御もできない、ほぼ「時が止まった状態」。
この8秒の間に僕は毎回相手を連打で叩き潰してるんだけど・・・さすがはルシフェル様の体と魔力、あんだけ殴ってまだ喋れるんだ。
次の発動までは約30分かかるんだけど、、もう勝負はついたしどうでもいいや」