信じた道
「お前、それでいいのか?」
「・・なにがです?」
フレイラに話しかけられ、光の前で足を止めるサラ。ふりむくとフレイラが腕を組み歩み寄ってきていた。先ほどまで背負っていた田天は地面に寝かされている。
「本物のルシフェルがどこにいるのか、気にならないのか?」
「もちろん気になりますよ。だからあなたたちをここで見逃して・・」
「なるほどな、私たちに全部任せてお前はのんびり天界でお茶しておくってことか?」
「・・はい?」
サラの目が鋭くなるが、フレイラは一切動じない。
「お前はここで私たちの目的も、ルシフェルのおかれた状況も知ってしまった。それなのに帰ってうその報告だけして終わりか?」
「わ、私はあなたたちを助ける為に!
それに私は誰よりもルシフェル様を大切に思っています!あなたにそんないい加減なことを言われるすじあいは・・」
「だったら来いよ、私たちのところに。」
「!!」
驚くサラの目には、優しく微笑むフレイラが移っていた。悪魔とは思えないその笑みと思いがけないセリフにひるんでしまう。気絶した田天のとなりではマルクが深くうなずいていた。
「・・・私は天界の、神に仕える兵士です。その職務を放棄しあなた方の旅に同行しろということですか?」
「ああ。」
「そんなこと・・できるわけ・・。」
「職務とルシフェル、どっちが大切だ?」
「・・・・」
サラはまた昔のことを思い出していた。それは仕事中にルシフェルに連れ出され下界の草原で会話をしていた時のこと。
「あの・・私まだ仕事中なのですが・・。」
困りながら、でも少しにやつきながらルシフェルに話しかけるサラに、ルシフェルは笑って言葉を返す
。
「はっはっは。お前は堅苦しいな。サボることもたまには大事だぞ?」
「そんなわけありません!」
「ほんとに仕事が大好きだなぁお前は・・。
じゃあもしこの先、おれが天界から追放されるようなことがあったら、お前はどうする?」
「私は・・悪には味方しません。それがたとえルシフェル様であっても。」
強く言い放つサラに、さらに質問をぶつけるルシフェル。
「では、天界も俺も、どちらも悪ではないとしたら?」
「それは・・・。」
「そうなったらどうしたらいいか教えといてやろう。もし仮にそうなったら・・
自分の信じた道を選べ。立場や好みもあるだろうが、お前が信じたほうを選べばいい。」
「私が信じた道・・」
「ああ、それでお前が俺を選ばなかったとしても、俺は満足だ。
お前は機械ではない、生きている者としての選択権を大切にしろよ。」
「・・・でも、さぼっていいことにはなりませんよね?」
「ま・・まあね。」
(私が信じた道・・私が信じているのは・・・)
「で、どうする?」
催促するフレイラの前に、サラは歩み寄る。
「・・私は天界では無遅刻無欠席の優等生でした。」
「ほう、それで?」
「そんな私が同行するのです。ルシフェル様奪還まであなたたち、足手まといにならないでくださいね?」
「ふふ、そうこなくっちゃ。」
右手同士で握手を交わすフレイラとサラ。
「サラよ・・よくぞ言ってくれたぞ。」と小さくつぶやくマルク。
なにも知らず気絶し続ける田天。