撮影本番、始まったバトル・ロワイアル
セルビアの森へ入っていく田天ら参加者四名。
この世界に来て初めて体験するバトル・ロワイアル。田天はドキドキが止まらなかった。
なによりバトル・ロワイアルと言っても他の参加者はみな、田天狙いなのである。
マガルタ、ジャキル、ラザエル。全員の視線を感じながら森を歩く。
『聞こえるかな!?参加者の諸君!
そろそろ始めようと思うんだけれども!』
森だというのに、ダーラ監督の声がスピーカー越しに聞こえてきた。
実はこの森には事前にダーラによる細工が施されているのだ。
というのも彼はこの森のいたるところにカメラとスピーカーを設置しており、参加者がどこにいてもその姿をとらえられるよう、そしてどこにいてもダーラの声が聞こえるようになっている。
さらに凄いことに、ダーラは参加者一人一人に飼っている「鳥」をつけさせている。
小型でありながらこの鳥はダーラの熱心な指導、飼育のもと「撮影」という一点においてずば抜けた能力身に付けたのだ
具体的には小型カメラを搭載した鳥雅が担当した演者(今回は田天たち)にぴったりとくっつきその姿を『絶妙なアングル』で撮影。
さらに彼らが移動すればそれに対応し鳥も飛んでついていく。
なかなかのスピードを誇っており、並の速さの演者ならまず見失わない。
森に設置されたカメラとこの鳥のカメラ。この二段構えでの撮影の様子は、森の外のダーラはもちろんフレイラたちギャラリーにもきちんと見られるようになっている。
かなり準備がきっちりされているが、これをダーラ一人でこなしているから見事である。
『ではまず参加者の四名は、互いの姿が見えないところまで散らばってくれ!
そして私のスタートの合図でこのバトル・ロワイアルが始まりだ!
君たちには特別な指導はしない、私は君らに感じた『なにか』が確かなら、私が特に手を加えなくても成功するはずだ!
準備はいいかな?』
己の武器を見つめ、復讐心を燃やすマガルタ。
無邪気にジャンプし、ワクワクが止まらないラザエル。
目を閉じ、不適に笑うジャキル。
そして仲間の応援を背に、勝利を狙う田天。
(ミートボール、俺が使うのはもちろんルシフェルだ。事の真相を聞き出し、そして・・)
『では・・バトル・ロワイアルスタートォ!!』
ついに始まった。
森の外ではフレイラやサラ、カレアが大声で応援する。ブレイズにいたってはいつのまにか応援団のような格好で旗を振っている。
ジャキルやラザエルの部下たちも画面越しに己のボスを応援する。
もう今は観客としてここにいるので、彼ら同士での戦闘はとりあえず起きそうもない。
田天は木の影に隠れ、ひとまずルシフェルの力の解放を試みた。
(頼む、眠ってる力よ・・どうか起きてくれ・・!)
しかしその願いが届く前に、どうやら敵が現れたようだ。
木の向こうでジャリジャリと足音が聞こえる。
(くそっ・・・誰だ?)
そーっと木から覗きこむ田天。しかし誰もいない。
「ここだ」
パッと振り返ると目の前には斧を構えたマガルタ。田天は目を丸くし固まる。
「喰らえ」
マガルタは一切待たずにその大型の斧を降り下ろす。