新たな技
セルビアの森での戦闘(撮影)が決まり、いったんマガルタはその場を離れることにした。
ダーラの映画の俳優に選ばれた嬉しさもありつつ、きちんと田天への怒りも忘れずに、彼を睨み付けながら去っていく。
「・・とんでもないことになったなぁ。」
腕を組み、うーんと考え込む田天。
ルシフェルを恨んでいるだけの男に、ルシフェルの凄まじい技を浴びせて良いものか。
しかし躊躇していては逆にマガルタに殺意満々の攻撃を受けることとなってしまう。
そんな葛藤に悩まされる中、アロマは
「たしかにとんでもないことになったね、ダーラさんの映画の俳優に選ばれるなんて」
「いや、そこじゃないよね」
夜中、みなが寝静まったころに田天はマルクに呼び出されて近くよ広野に来ていた。
決戦を控えた田天に、マルクは真剣な表情を見せる。
「田天、これからまた新たな技を伝授しようと思う。」
「・・マガルタ対策ってこと?」
「それもだが・・今回は何か嫌な予感がするんだ。
ルシフェル様の力を解放したお前でも、今回はやばいかもしれん。」
「そ、そんな状況が明日待ってるの!?」
力を抜こうか迷っていた田天にとって、このマルクの言葉は予想外であった。
もはや本気で行く以外の選択肢は消え去ってしまっていた。
「とりあえず技の名前とその能力を伝える。そのあとに技を使うときのコツや魔力の使い方をひとつひとつ教えていく。
オッケーか?」
「オッケーです」
ルシフェルの力を自由に解放できない田天に、マルクは新技の説明だけ淡々と続ける。
そして田天はそれを把握し、ルシフェルの力を使えないなりにシミュレーションを繰り返す。ただひたすら。
本番でミスをしないために。
次の日、田天と仲間たちは談笑しながらセルビアの森に向かった。
マルクと田天を除いてみんな田天の圧勝を確信していたので、決戦前だというのに明るいムードに包まれており、
「私も出られるのかなぁ、もっとおしゃれしてくれば良かったかな・・」
「う、うーん・・今のままでも十分だと思うよ」
セルビアの森の入り口にはすでにダーラとマガルタが立っている。
濃い青髪をなびかせ、斧をかついだマガルタの後ろ姿はなかなかに格好いい。
「・・来たか、ルシフェル」