恨みの理由
「ちょっと待ちな。そいつがいったい何やったってんだ!?」
肉を頬張りながらブレイズがマガルタに歩み寄る。
マガルタはそんな彼を気にもとめずただひたすら田天を睨み付けていた。
「じゃあ教えてやるよ。俺がこいつを恨んでいる理由をな。
あれは俺が・・好きだったパメラちゃんに告白しようとした時だった・・」
ある日、戦士マガルタは村の娘パメラに恋をした。
理由は一目惚れで、それから毎日彼は彼女を想い続けた、がなかなか行動に出ることができないでいた。
彼女に恋をして一年が過ぎた。マガルタが森で素振りをしていると突然、遠くから女性の声が聞こえた。
彼がダッシュで現場に向かうと、なんとパメラが大型の魔物、サイクロプスに襲われていたのだ。
マガルタが駆けつけたときにはすでにサイクロプスはパメラを左手で掴みあげており、今から彼女を「餌」として食べるところだった。
「だ、誰か・・・誰か助けて・・!」
死を覚悟したパメラだったが、気づくとそこは土の上。
顔を上げると、左手を切り落とされたサイクロプスの前に誰かが立っている。マガルタだ。
「パメラさん、もう安心だ。こいつは俺が秒殺してやるよ。」
宣言通りサイクロプスを一秒で倒したマガルタはパメラの安否を確認する。
「怪我は?」
「大丈夫です・・あなたのおかげで。」
「はは、それは良かった。」
「あ・・!」
パメラはマガルタの横にたっていた木を指差した。マガルタがその木を見てみると、微かだが木が白く光っている。
「珍しいですね。
知っていますか?『白光樹』。この木の前で告白した者は必ずうまくいくって噂なんですよ。」
「必ず・・!」
初めて白光樹の話を聞いたマガルタ。
もうここしかチャンスはない。そう自分に言い聞かせて、
「パメラさん!実は俺、君のことが・・」
そのとき、魔力を帯びた雷が白光樹に落ちた。
雷鳴が鳴り響き、気づくとすでに白光樹は灰と化しその場はただの平地に。
マガルタが上を見上げると、天使が一人飛び回っているのが見えた。そしてその天使には見覚えが。
(あれは指名手配になっている大天使ルシフェル・・よりにもよってこんなときに・・・ん?)
ルシフェルはそのままピューっと遠方に飛んでいく。
どうやら二人は襲われずに済んだようだ。
「よ、良かった良かった!ビックリしたけど二人とも無事だし、一件落着!
では気をとりなおして、君のことが好きです!俺と付き合っ・・」
「ごめんなさい!白光樹が灰になったってことはあなたとはうまくいかないってことだと思うの。だから、ごめんなさい・・。」
そう言って一礼をし、走り去るパメラ。
そんな彼女の後ろ姿を眺めながらマガルタは誓った。
ルシフェルを必ず叩きのめす、と。
「これが俺が貴様を恨む理由だ!ルシフェル!
貴様のせいでフラれたんだよ俺は!
それから貴様への復讐だけを考えてきた。殺してやるよ、死んで詫びろぉ!!」
「・・・・・・。」
マガルタを除くその場の全員が言葉を失っていた。
いや正確には若干名は笑いをこらえているようだ。
「・・なんじゃその理由は。」
「雷で町娘が死んだとかなら分かるけど・・フラレたから恨んでるの?」
「そうだ!ルシフェル、貴様がいなければ俺の告白は成功していたんだよ。」
そのくらいでここまで狂った殺意を抱くマガルタと、白光樹が消えたくらいでフったパメラの両者に呆れる田天一行であった。