ルシフェルに恨みをもつ男
夜。悪魔のジャキル、天使のラザエルが向かっていることなど知らずに、田天たちはバーベキューを楽しんでいた。
サラの魔法の一つ「宝具の貯蔵庫」。この技はあらゆる物を別世界にストックすることができるというなかなかに便利な技だ。
近くの街で購入したバーベキューセットをこの技で収納することで、旅のとちゅうでもこのようにいつでもバーベキューができるというわけだ。
「しかしお前にそんな技があったなんてな。」
「はい。悪魔とは違って天使はあらゆる種の技を使うことができるのですよ。」
「宝具の貯蔵庫ねぇ、バーベキューセットは宝具なのか?」
「不満があるならあなただけ生肉でも食べててください。」
フレイラとサラのいつものやりとりを聞きながら、一同は楽しい夜を過ごしていた。
そんななか、田天はずっと気になっていたことをマルクに問う。
「そういえばマルク、本物のルシフェルってどんなふうに暴れていたの?」
「ふむ、あのときはとにかく破壊破壊の毎日だったなぁ。
あらゆる技を乱発し、目についたもの全てを無にする日々。基本的にあの頃は、俺の言葉などあの方の耳には届いていなかった。」
「人も・・たくさん死んだの?」
田天の質問にマルクは黙ってうなずいた。
やはりその被害は人間にも及んでいたようだ。
あらゆる物を破壊しあらゆる生命体を死に追いやった。
それがルシフェルの「罪」。その「罰」が神ゼウスによるルシフェルの堕天と弱体化。
それを改めて考えた時に、田天の頭に浮かぶのは己の身の危険であった。
「じゃあルシフェルに恨みをもつ者が俺のところに復讐にくるってパターンは・・」
マルクはニッコリと笑い、それに答えた。
「ありえるだろうな。」
「なんで笑ったし。」
その時だった。近くの草むらから盗賊のような格好をして、巨大な斧を持った男が現れた。170センチほどの身長でそこまで筋肉ムキムキというほどではないが、2メートルほどの斧を軽々と持ち上げている様は異様だ。
「やっと・・やーっと見つけたぞ。ルシフェル。」
「・・あれ?これまさか噂をすればなんとやらパターン?」
ふっとマルクのほうを田天が見たときにはそこにマルクはおらず、すでにフレイラの後ろに隠れていた。
「何者ですか?あなた。」
「俺は戦士マガルタ。そこにいる男、ルシフェルに個人的に用がある。
用というか・・恨みだな。」
あぁ間違いない。親族を殺された恨み的なやつだ。と悟った田天。
しかし彼は怯える様子もなく、自然とマガルタに向かって構えをとっていた。