本物だとしたら
「・・・」
サラはそれから特訓に特訓を重ねた。ルシフェルに傷をつける為に。しかしそれから本当に彼に攻撃を当てることはかなわなかった。
「はは。さすがサラだな。日に日に上達しているのがはっきり分かるぞ。」
ルシフェルはサラを毎回ほめてくれていた。それはサラにとってうれしい事であると同時に、疑問にもなっていた。
「ではルシフェル様、このままいくと私はあなたに一太刀入れることができるようになるのでは・・?」
「それは無理だ。たしかに成長はしているが、お前と俺とでは桁が100ほど違う。お前のレベルが7から8になろうが、俺にとっては脅威ではないのだ。」
「は、はぁ・・。」
(正直あのときのルシフェル様の言葉はふざけているとしか思えなかった。でも、あの人と接していくうちにわかりました。あの人は本当に、私とは違う次元にいるということ。
ずっと私の憧れであり続けるということ。)
サラは田天を前に、光の剣を消滅させた。田天は「え?」という表情をしながらそれを見る。そしてサラは今一度田天の目を見つめる。サラのその黒い目はとても綺麗で、フレイラとは違い底知れない落ち着きが感じられた。
「な、なんでしょう・・か・・?」
「・・やはり、あなたはルシフェル様ではないみたいですね。
ルシフェル様のような無限に広がる闇のような魔力が、あなたの目からは感じられません。」
「最初から・・そういってるのに・・。」
緊張が解けたのか、フラっと倒れこむ田天。彼を受け止めたサラはゆっくりとドーム状のバリアを解き、彼をフレイラたちのもとに運んで行った。
(本当は彼の顔に傷をつけたときに気付いていた・・
彼がもし本物のルシフェル様だとしたら、たとえ弱体化していたとしても・・そんなこと絶対に起きないのだから・・・)
「すみませんでした。今回の件は完全に私の勘違いでした。」
田天を背中にしょったフレイラと、マルクにお詫びするサラ。深くお辞儀をして、ポケットから薬のようなものを取り出した。
「これを使えばその程度の傷ならばすぐに回復するでしょう。彼が目覚めたら使ってあげて下さい。
そして私の謝罪も伝えておいてください。」
黙って薬を受け取るマルク。黙って空を見上げるフレイラ。
「お前はこれからどうするんだ?サラよ。」
マルクが問いかけると、サラは優しく微笑み答えた。
「天界に戻り、仕留めたと報告しておきます。これで天からの刺客はもう来ないでしょう。安心して旅を続けてください。」
「で、でもお前・・もしその嘘がばれたら・・・」
「・・失礼します。お元気で。」
背を向け杖を使い、来た時と同じ光を出現させるサラ。
その時、フレイラが彼女に声をかけた。