モンド砲
かなり近い距離まで迫ったジャキルに、モンドは問う。
「ジャキルといったな、お前まさか俺のことを知らないのか?
悪魔将軍モンドといえば悪魔軍に知らぬものはいないと思ったが。」
まわりの悪魔兵たちはクスクスと笑う。モンドを知らない目の前の男をバカにしたように。
「知らないねえ。俺は『特殊戦闘員』だから本部にあまり帰ってこないからなぁ。
サタン様はもちろん三銃士やセブンスペルズの連中は把握してるが、それより下の“雑魚“については分からないよ。」
「・・なに?」
「しかし残念だ・・ダイアモンドみたいな名前してるから美女かと期待していたのに、会ってみたら野郎だなんて。」
悪魔たちがざわつく。モンドの顔から一切の笑みが消えた。
「ではこういうのはどうだ?ここで戦って勝ったほうが田天抹殺に向かう・・。」
「ふーん、面白いじゃん。」
モンドの提案に軽い感じで賛成するジャキル。
その答えを聞くやいなやモンドは右手に魔力をこめて力みだした。
地面が揺れ、その振動がジャキルや悪魔兵たちに伝わる。
青ざめて身をふせる兵士たち。どうやら彼らはモンドのこの技を知っているようだ。
「山を一つ吹き飛ばしたという伝説を持つ、『モンド砲』が来る!」
恐れおののく兵士たちを背に、モンドは恐ろしい形相でジャキルをにらむ。
「死んだらごめんな、だが体感せよ・・これが“隊長格“の実力だ!」
モンドの右腕から波動砲が放たれた。
モンド砲と呼ばれるその攻撃は衝撃波を撒き散らしながらジャキルに向かう。
「マジか、こんなすさまじい・・」
予想を超える迫力のモンド砲に驚くジャキル。そんな彼にモンド砲が直撃すると、その余波か、ジャキルのはるか後方にあった崖が激しく崩壊した。
バラバラと崩れる崖を見てモンドは右手をポケットにおさめて歩きだす。
「お前たち、いつまで伏せている。行くぞ。」
「とんでもない威力だな、たしかにこれはバカにしすぎたようだ。」
「!!?」
背後の声に振り替えるモンド。そこには無傷で立っているジャキルがいた。
「たしかに・・直撃だったはず・・!」
「正確には、“俺には当たっていない“がな。ま、食らってたら死んでたろうな。
じゃあ次は俺の番か。」
数秒後、そこには血まみれで倒れているモンドの姿があった。
完全に気絶しており、もう戦闘できる状態ではなかった。
呆気に取られる悪魔兵士たちに、無傷のジャキルが明るく声をかける。
「じゃ、今から君たちは俺の部下ってことで。
田天退治に出発といきましょうかねえ。」