田天抹殺に向かう刺客たち
ヘブン・キャッスルの天使たちにも悪魔軍と同じく多くの幹部が存在する。
そのなかの数名による会議が定期的に行われており、今回は八名の幹部が田天らを議題に話し合っている。
「ルシフェルは始末するとして、サラは連れ戻したほうが良いと思う。あいつは優秀で、これからの天界に必要な人材だ。」
「しかしルシフェルに同行している時点であいつはもはや悪人。再び天界で働かせるのはいかがなものか。」
「無理矢理連れられている可能性もあるぞ?」
いつもと同じような議論が繰り広げられ、やはり決着がつかない。
すると会議室の隅でゲームをしていた子供の天使が、幹部が囲む机にゲーム機を放り投げた。
ガシャンと音をたてパウンドしたゲーム機は、やがて机の上で静止した。
「あなたたちさぁ、いつまでこんな議論やるつもり?結論出るまでに僕、大人になっちゃうよ。」
「・・ラザエルくん。」
子供天使のラザエルはピョンと机に飛び乗り、不適な笑みを浮かべた。子供らしからぬその表情は幹部たちの目に不気味に映る。
「・・僕、ガブリエル様から言われたんだよね。『幹部たちの意見がまとまりそうになかったら、ルシフェルとサラを始末してこい』って。」
そう言って机から飛び降りたラザエルは、会議室のドアを開けた。
「ま、待てラザエルくん!勝算はあるのかね!?」
「勝算?もちろんあるよ。ないならガブリエル様は僕にこんなこと頼まないって。
サラは言わすもがな、ルシフェルの息の根も確実に止めてくるから。ばいばーい!」
子供らしい無邪気な雰囲気で、明るく残酷な発言を残しラザエルは去っていった。
悪魔軍本部では悪魔隊長モンドが出撃準備を進めていた。
彼のまわりにはすでに下級兵士の悪魔が50名ほど待機している。
「さて、では行こうか。モンド様がベリアの敵をうってやろう。」
「その必要はないよ。」
意気込むモンドの背後から、羽織を来た和風な悪魔が現れた。左の角が黒く鋭く伸びているのに対し右の角が短いという特徴的なルックスをしている。
「モンド隊長・・ここは悪魔軍“人斬り“ジャキルに任せていただきたい。
トレーニング施設で話は聞かせてもらった。ルシフェル抹殺は俺が引き受けた。」
このジャキルという悪魔はずかずかとモンドの目の前まで歩みでた。モンドは全くその場から引かず、むしろ大量の邪気を放っている。