全員解雇
それからさらに日は流れ、気づけば田天らがここに来てから一ヶ月が経っていた。
フレイラ、サラ、カレアの三名はマグニとの稽古で各々がパワーアップし、それなりに自信をつけていた。三名とも個別で指導を受けていたが、それぞれが最後の稽古の時にマグニから同じことを言われていた。
「いいか?お前はワシと会ったときより格段に強くなっておる、肉体的にも精神的にもな。
悪魔軍でトップの知恵と経験を持つワシが教えたんじゃ、強くならないほうがおかしい。
そう考えるとブレイズは困ったもんだが・・
まぁいい。これからはその力をさらに磨き、仲間、特に田天を助けてやってくれよ。」
農作業のほうも充実しており、今日も作業を終えたみんなはぐったりとした様子で小屋に向かう。
小屋にはすでにルビーンの紅茶を飲んでくつろいでいるマグニの姿が。
「今日もよく頑張ったな。基礎体力は間違いなく上がってるだろう、ハッハッハ!」
そういって紅茶をすするマグニをジーっと睨むフレイラ。
「呑気だなジジイ。お前もちっとはやってくれよ。」
「何を言っている?明日からは嫌でもやるさ。
お前たちは今日で解雇するつもりだから。」
「え?」
全員のキョトンとした顔をマグニは笑いながら眺める。
「もう情報代の分は働いてもらったよ。」
「でも、あれだけ莫大な金額だったのに一ヶ月で良かったんですか?」
「良い。それになかなか楽しく刺激的な日々を過ごせたからな。」
椅子から立ち上がったマグニは窓の外を眺め始めた。どうやら畑を見ているようだ。
「それにしてもたくさんの作物ができたのぉ!当分は一人でも生きていけそうだ。」
「お、おいちょっと待てよ・・。」
ブレイズがマグニの肩を後ろから掴んだ。
「まさか、俺まで解雇なわけないよな?」
「は?お前も解雇だが?」
時が止まる小屋の中。ブレイズは肩から手を離し、涙ぐんだ目を拭った。
「なんでだよ!なんで今日で終わりなんだよ!」
「ワシはもうやれる限界までやった。フレイラたちは強くしてやったし、田天も気づいてはいないだろうが確実に成長した。
そしてブレイズ、お前の進むべき道も今日ようやく分かった。」
「進むべき・・道?」
「田天たちに同行させてもらいなさい。家族を失いずっとワシのところにいたお前に足りないのは、経験だ。
この先の冒険でお前の成長の鍵となるものが必ず見つかる。その鍵はここには無い。お前がいつか、どこかで、自分の目で見つけるんだ。
お前が成長することが、ワシへの最大の恩返しだよ。」