ブレイズの『強さ』
ブレイズがゴブリン退治に向かって10分が経過した。
水撒き組みの作業は一通り終わり、とりあえずみんな小屋に向かった。
何名かはブレイズの加勢に行こうとしたが、マグニがそれを止めて全員が休憩することになった。
「みんなお疲れじゃな。ほれ、紅茶を飲みなさい。」
マグニがティーカップに入った紅茶を持ってきた。どうやらミルクティーのようで、それに口をつけた全員が目を見開く。
「「おいしい!」」
「なんだこの味は!?」「味だけじゃありません・・香りも素晴らしい。」「こんなの飲んだことない!」「なんだか疲れた体が癒えていくような・・。」
この紅茶もこの畑のルビーンをブレンドしたもので、どうやら商品化もしていて実際に売っているようだ。
「これがかなりの売れ筋でな、お前さんたちが今畑で作ってるぶんもすぐに売れてしまうだろうな。」
「ほんと凄いねルビーン。まるで漫画やアニメのアイテムみたい。」
なんとも言えない感想を吐き出しながらカレアは紅茶をズズッといただくのであった。
小屋のドアがガチャっと開かれた。開けたのはブレイズなのだが、見てられないレベルで全身血まみれであった。それなのに「ハハハ、仕留めてやったぜ」と笑っている。
「マグニさん、シャワールーム借りるわ。あとで俺にも紅茶くれ。」
「・・ああ。」
ヨロヨロで小屋の近くのシャワールームに歩いていくブレイズを、田天らは口を開けながら見送る。
「・・マグニさん。ブ、ブレイズってどのくらいの強さなんですか?
敵はゴブリン一匹だったように見えたけど、あんなに血まみれに・・」
「ブレイズは普通の人間じゃよ。魔法も闘気も使えない、ただの青年じゃ。」
「え・・?」
窓からシャワールームがある別の小屋を眺めるマグニ。その背中はどこか悲しそうだ。
「あいつは幼い頃にある魔物に襲われた。奇跡的に助かったのだが、両親を含む街の連中は全滅。身寄りのないあいつをワシが育てることにした。
そんな暗い過去があるにも関わらずあいつはいつも前向きで元気で、何事にも絶対に諦めずに取り組む熱血漢だ。当時から今までずっと・・。
そんなあいつがある日、「魔物退治のために強くなりたい、稽古をつけてくれ」と言ってきてな。一応知識も知恵もあったワシがそれに付き合ってやることにしたのだが、驚くほどに強くならん。
どんなに頑張っても、どんだけ血を吐いても、何年稽古を続けても・・相変わらずあいつは弱いままだ。」