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少女と神父のとある日常

「おかえり、さよちゃん。」

「たぁだいま。」


新緑の草原を駆け抜ける一陣の風のような爽やかな笑顔で帰宅の挨拶を頂いた。

小夜子はこの笑顔をおば様キラーと読んでいる。彼は毎日近所の奥様方をその笑顔でばっさばっさとなぎ倒しているのだ。

そんな彼の名前はシエル・フラント。

つい先日隣に越してきた、金髪碧眼でモデルのように端整な顔立ちをした外国人である。

職業は神父。たぶん、神父。


「学校はどうだった?」

「別に普通だよ。いつもと一緒。あまりにも眠すぎて授業の予習をしようと思ってね……。」

小夜子は徐に鞄を開けると、数学のノートを取り出した。

「こんな超大作を仕上げてしまったよ。」

パラリと捲ったノートのページを贅沢にも1ページを使い書かれていたのは、天使の絵である。ほぼ丸一日使って書いたものだ。

シエルは手を伸ばしノートを受けとるとしげしげと見つめた。

「ほお、素晴らしい。さよちゃんは絵がとてもお上手ですね。」

「私の唯一の取り柄だ。」

小夜子はない胸を突き出して得意気に笑った。

「授業中に行っていることは褒められたことではありませんが、何か夢中になれることがあるのは素晴らしいことです。私なんて貴女と同じ位の歳で、サーベルやバットしか振り回していませんでしたから」

「サーベル……バット……?」

あんた本当に何してたんだ。

そう問いかけたい所だが、小夜子はあえて触れないことにした。

彼の闇は存外深そうである。うっかり聞いてしまった時には精神的ダメージを食らうのは確実だろう。

「……。そう言えば、勉強は得意?出来たら教えて欲しいなぁって思うんだけど。」

あからさまな話題変更だが、気にしてはいけない。

それに神父も特に話を続ける様子もなさそうだった。


「うーん。あまり好きではなかったものでね。得意か否かと言われれば、否と。」

「そっかぁ……。」

「でもある程度は教えられるから。」

露骨に残念そうな顔をしてしまい、神父様から苦笑混じりで言われてしまった。

すみません、私正直者過ぎて顔に出てしまうのです。と、心の中で謝罪して有り難く神父様の勉強会を受ける小夜子だった。




「不得意とか嘘ついたな……。こんなに出きるなんて聞いてないもん!」

「不得意でもある程度の課程は終えてますからねぇ。」

「ある程度とかいって、大学レベルであるんでしょ。」

「いえいえ。博士課程程度です。」

「ん?」

「博士課程。」

「何が不得意よ、嘘つき。」

「勉強が得意か否かといっただろう。得意でもなければ好きでもない、寧ろ嫌いだよ。勉強なんかやってるくらいだったら、動きまわる方が100倍増しだよ。」

「その言葉は神父としてどうかと思う。」

「勉強嫌いの神父がいたっていいじゃないか。」

綺麗な顔に満面の笑みを浮かべたその姿は眩しかった。


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