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黒のヴァージンロード  作者: テオ
第一章『Marriage meeting』
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第一章:Marriage meeting 05

勢いでやると言ってしまったものの、

さて、私は何をすればいいんだろうか。

マイナ様が帰ってしまったので、

途端に私は落ちつかなくなってしまう。


目の前に座るフレデさんは、

のほほんとして何を考えているかわからないし。


(そもそもヴァンパイアって実在したんだ……)


かつて魔王を守護していたという

四天王の一人がヴァンパイアだった……

なんて英雄譚では聞くけれど

正直、架空の存在だと思っていた。

あれやこれや逸話は数多くあれど、

実際に直接見たという話は一切聞かない。

だから目の前にいても現実味がない、

それが正直な感想だった。

マイナ様があれだけの態度をとるのだから、

間違いなく本物なのだろうけれど。


「やっとあの女が帰ったのかよ。

 ったくおっかないんだよなーあいつ」


私がうんうんと唸っているとそんな言葉が聞こえた。

まさかフレデさんが

そんなことを言い出したのかと

思ったけれど声が全然違う。

優しげなフレデさんの声とは違い、

悪態をついたのはハスキーな女性の声。


「こらシェルマリク。

 そんなことを言ってはいけないよ。

 彼女も大変なんだ、

 人間はしがらみが多いからね」


他に人がいたのかと思って、

声の方を向くと……


「ったく。

 マスターもなんであんなヤツの肩を持つかねぇ。

 律儀に聞く必要なんてねーんだぞ」


カシャッカシャッと爪がこすれるような小さな音。

それは部屋の奥からトコトコ出てきた。


「か……」


私の口から無意識に声が漏れる


「あん? なんだよお前?」


ぶっきらぼうな声に、


「かわいいいいいいい!」


思わず飛び出して抱きしめてしまった。


「ちょっ、おま、何しやがる!」


腕の中でじたばた暴れているのは、

漆黒の毛並を持つ狼だった。

とはいえまるで子犬のような大きさで、

口調とは裏腹の

つぶらな瞳に私は負けてしまった。

この子、連れ帰ったらダメかな?


「わあ、喋ってる!

 凄い凄い!」


「狼が喋ったら悪いのか!

 いいから離せ!

 私はぬいぐるみじゃねーぞ!」


逃げようとするが、

しっかりとホールドして逃がさない。


「あらあら、楽しそうですね」


そこへ更に新しい声。

丁寧な口調ではあるが、

どこからかうような意地悪そうな声だ。

振り返るとそこにあったのは、

拳よりは少し大きいくらいの鳥の置物。

多分、石で出来ているとは思うけれど……


「主様、自己紹介をいたしませんか?

 まだきちんとその子とも話していないでしょうし」


石の置物がパクパクと口を開いて喋っていた。


「私たちのこともお話した方がよろしいのでは?」


驚く私のことを見て、

おかしそうに笑っていた。


「そうだね。

 きちんと自己紹介をしようか」


その言葉に抱きかかえていた狼は腕をすり抜け、

フレデさんのいるところへ行き、

並んでちょこんと座った。

その頭の上に、石の鳥も羽ばたいてきて乗る。


「俺はフレデ=ストル。

 見ての通りヴァンパイアだよ」


なんともないように、

自然にさらっと言い放った。

私は慌てて頭を下げる。


「それでこの子が……」


狼さんが口を開く。


「シェルマリク=ティーランドだ。

 いいか、私は犬でもないし狼でもない。

 誇り高きワーウルフだからな」


威嚇するように唸るが、

子犬にしか見えないのから微笑ましい。


「私はガロと言います。

 以後お見知りおきを。

 見てもわからないかとは思うけれど、

 ガーゴイルというモノです」


羽をパタパタしていた。

石っぽいのにまるで本物みたい。


「ガーゴイル……?

 もっと怖い姿だと思っていたけれど……」


「ガーゴイルの元々の意味は石の雨といの名。

 姿や形に決まったモノはないのです。

 それとごっちゃになって私の様に

 石に化けられる魔物を

 ガーゴイルと呼んでるのですよ。

 私は姿は自由に変えられるのだけれども」


そう言って彼女?は

まるで粘土細工を捏ね回すように

次々と形を変えて見せてくれる。

犬、猫、鳥、そして


「ぷっ」


先ほどの怒った表情をした

マイナ様の顔になった時は

そっくり過ぎてさすがに笑ってしまった。

そうそう、こんな怖い顔をしていたんだよね。

ガロはシェルマリクとは違い丁寧な口調。

だけれどどこかからかうような色が常にあるから、

多分だけれどシェルマリクと同じように

癖のある性格なんだろうなと思う。


「この二人は俺の使い魔だよ。

 仲良くしてあげてくれると嬉しい」


きっと彼らなりに歓迎してくれているのだと思う。

どう接すればいいのか私はわからなかったけれど、

自然体でいこうと決めた。


「はい!」


返事をしてから、

私の番だということに気付く。


「私はミスティミリア=アイネル。

 ミミって呼んでください

 聖エアリア学院の5年生、17歳です」


元気よく挨拶するも、

目の前の三人(?)は少し戸惑った用意だった。


「17歳……聞いてた通りではあるけれど」


フレデさんは事前にマイナ様から

ある程度の情報は聞かされている……とは思う。


「ちょっと育ちわるすぎねーか?」


「私も気にしているの!

 それはもう、色々、と!」


狼の言葉に私は反射的に答えてしまい、

ああ、言い方がまずかったかなと

慌てて言い直そうとするけれど


「その喋り方で構わないよ。

 自然に話してくれた方が俺も楽でいい」


フレデさんは笑って言ってくれた。

そして内緒話をするような小声で付け加える。


「マイナさんはあんな感じだろ?

 あの人が来るといつも話し辛くてさ」


この人なりの気遣いなのだろう。

だから私は素直に甘えることにした。


「ありがとう、フレデさん。

 それとえーと、シェ、シェル……?

 とりあえず狼さん、

 体格のことは話さないでね」


勢いよく言うと、

今までそんな風に

人に言われたことがなかったのか

ちょっと仰け反って遠慮がちに

「お、おう」と頷いた。

いちいち仕草が可愛くて困る。


「いいか、私はシェルマリク=ティーランド」


「ごめん、ちょっと言い辛くて覚え辛いかも」


「おめーだって

 ミスティミリア=アイネルって長いじゃねーか」


「私はミミだから、

 じゃあアナタはマリクにしようよ!」


「ちゃんと呼べよ!

 おめ、絶対覚えてるだろ!」


じゃれ合う2人にフレデさんとガロが笑う。


「君に何をしてもらうかは考えておくよ。

 ガロ、シェルマリク。

 その子にここを案内をしてあげて」


「マスターまで……仕方ねーなぁ」


マリクは華麗にソフィーから高く飛びあがり、

ご丁寧に空中で体を捻りながら着地した。


「ついてきな」


カシャカシャ爪が地面を擦りながら歩き、

その頭にガロが乗る。

私も慌てて二匹の後に付いて行った。


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