最終章:Virgin Road 07
黒い教会は外見とは違い、
中は飾り気のない白で統一されていた。
その穢れのない真っ白な世界に
引かれたヴァージンロード……
終着点である祭壇まで続いている。
花嫁を先導してくれるフラワーガールだっていないし、
左右には参列者だって誰もいない。
讃美歌もなく、ただ静謐な空間……
まるで時が止まっているかのようだった。
「……」
私はティア様と腕を組んでゆっくりと歩いて行く。
薄いベールの先から見える視界に、
彼が立っているのが見えた。
ぴしっとした黒いタキシードを着こなし、
私たちが来るのを静かに待っている。
「まさか君が、立会人になってくれるなんてね」
そして永遠とも思えた道を
私たちは彼の元まで歩いた。
「ふふっ、ビックリしちゃった?」
ティア様は悪戯っぽく笑う。
組んでいた腕をほどき、
一度ふわっと回ってから私たちの前に立つ。
そこは祭壇の前。
祭壇の後ろには女神様の彫像が
いつの間にか見守るようにそこにあった。
「……すぅ」
一度大きく息を吸い込んでから、
ティア様は私たちを見る。
そんな彼女を私とフレデは並んで見上げた。
静かな聖堂に、
高らかに近いの言葉が読み上げられる。
「――汝フレデは、
この少女ミスティリアを花嫁とし、
光が大地を照らす時も、闇が空を覆う時も、
常にこの者を愛し、慈しみ、守り、助け、
この世界が黄昏に包まれる時まで、
共にあり続けることをを誓いますか」
ティア様の読み上げた誓いの言葉は
私の知っている物と少し違った。
だけれど、それが私たちのためだけに
用意された言葉だって何故だかわかった。
「ああ、誓おう」
迷いない、フレデが力強く頷いた。
「――汝ミスティミリアは、
この男フレデの花嫁となり、
優しさが二人を包む時も、悲しみが身を貫く時も、
常にこの者を想い、愛し、信じ、抱きしめ、
この世界が祝福に包まれる時まで、
共にあり続けることをを誓いますか」
また少し内容が違う。
それにどんな意味があるのかはわからない。
だけれど、私は彼を愛すると決めたのだから、
戸惑うことなくしっかりと頷いた。
「はい、誓います」
ティア様は満足そうに微笑む。
「今、二人へ女神と私が捧げます、
惜しみない満ち溢れた祝福を。
例えどのような困難があっても、
誓いを交わした二人を愛の前には
穏やかなさざ波となることでしょう」
ティア様が手をあわせて、
そして広げると温かい光が広がり
私たちを包み込んだ。
「さあ、誓いのキスを」
私たちは向かい合う。
「ミミ……」
黄金のベールをあげられた。
私の金色の瞳と、
彼の赤色の瞳が見つめ合う。
「フレデ」
私は目を閉じた。
彼を待つ瞬間はほんの少しだったはずだけれど、
私にはまるで永遠のように感じられた。
「――」
唇に暖かい感触。
――そして、世界は光に包まれた。




