表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒のヴァージンロード  作者: テオ
第四章『Go a long way』
PR
39/50

第四章:Go a long way 09

「カレン、

 美容液出来たよ」


私が学院に顔を出せたのは二日後だった。


「ああ、ありがとう」


カレンが受け取りながらも、

少し訝しげに尋ねてくる。


「もしかして昨日休んだのは

 これのためだったのか?」


「ううん。

 それだけじゃないから気にしないで。

 ちょっと森に行ってたんだよ。

 フレデがなんだか

 他にも素材が欲しいからそのついでだよ」


あの日、結局戻れたのは真夜中で、

すっかり日付が変わってしまっていた。

寝て起きたらもう昼は過ぎていて、

学院の授業には間に合わなかった。

予め休むことは学院には伝えていたけれど、

シスターセッチの物凄く

問い質そうとする表情はちょっと面白かった。

今度一度、きちんとシスターセッチにも

実習のことを話した方がいいかな?


「……え、森まで行ってたの?

 森って南東のエーナンの森、だよね?」


ナターシャが驚いていた。


「うん、多分そこだと思うけれど」


どうしたんだろうと思って聞くと

答えてくれたのはマリーだった。


「ミミ、あそこはね、

 とーーても危険な場所なんだよ。

 危険な獣がいっぱいいるんだってさ。

 特に夜とか絶対に近づいたらダメって、

 去年の実習前の説明の時に聞かなかったっけ?」


「そうだったんだ。

 獣かぁ……見なかったなぁ」


今更だけどそんなところを

「散歩」だなんて、

やっぱりフレデたちは特別なんだなと思った。

マリーの言葉にカレンも頷く。


「ザルマムさんがそういえば言っていたな。

 先月くらいにその森を突っ切ってきたっていう、

 凄腕の冒険者がいると。

 森を抜けれるだけでも優秀な証らしい」


ザルマムさんって確か、

ロッサ家のあの強そうな護衛騎士のことだよね?

その人にそれだけ言わせる人だから、

相当な実力者なんだろうけど……

なんだか最近同じような話を聞いた気がする。

マリーが身を乗り出してカレンに尋ねた。


「なになに、その面白そうな話?」


「炎魂のニカっていう冒険者でね。

 炎の魔法の扱いに長けた

 二本の短刀使いだそうだ。

 スカウトしたかったらしいが断られたらしい」


「へぇ!

 強そうな人なんだ、一度見てみたいね!」


マリーがはしゃぐ。

やっぱりマリーはお仕事の関係上、

色んな事にアンテナを張ってるのだろうかと思う。

実は森の下には竜が寝てるんだよって、

教えてあげたら

どんな顔をするのかちょっと試してみたくはある。


(それにしても炎魂のニカかぁ……)


お酒を飲んで良い気分で

鼻歌を歌っていたニカさんの姿を思い出し、

人は見た目に寄らないんだなぁとしみじみと思った。

「炎魂」ってどういう風にしたら、

そんな通りの名つけられるんだろうか。


(……あれ?)


それにしても先ほどのカレンの言葉、

少し引っ掻かることがあった。

何か、大切なことを見落としているような……

私がその違和感に気付くよりも先に、

カレンが私に向かって

少し申し訳なさそうな顔をしながら口を開いた。


「そういえば実はミミにお願いがあるんだ」


「お願い?」


「ああ、私が薬頼んだばかりで悪いんだけど、

 実はセレスタお嬢様が

 一度ミミと話してみたいって言い出したんだ」


「うん、良いけれど……?」


あの派手なお嬢様が私に何の用事だろう。

カレンに渡した薬みたいに、

何か欲しいものがあるんだろうか?


「ただ、お嬢様は魔族が苦手だから、

 ミミには一人で来て貰いたくて。

 あの人の我儘はいつも突然だから」


カレンも断ろうとしたけれど、

多分駄々をこねられたんだろうなと思う。

そういう真面目なところは、

彼女がいつも苦労するところだと思っていた。


「うん、良いよ。

 それはいつなの?

 あんまり長い時間はちょっとだけど」


私が言うと、

カレンはほっとしたような顔をする。


「なら明日にでも。

 軽く世間話でも付き合ってあげてほしい。

 1時間、2時間くらいで済ますようには

 なんとか強く言っておく。

 彼女も私たち以上に世間知らずなところがあるから

 念を押しておかないと何を言い出すかわからない」


私は気軽に了承した。

ちょっと貴族の豪邸というのも見てみたい気がするし。


「ふーん……ミミ、何か面白いことがあれば教えてね」


そんな私をマリーが

少し何か考えている様子でそう言った。


「ん?

 うん、それはいいけれど」


なんなんだろう。

ここ最近、マリーのこういう

何か難しいことを考えている

表情をよく見る気がする。


「それじゃあ、お嬢様に伝えておく。

 明日はよろしく頼むよ」


そう言ってカレンは

手を振って教室から出ていった。

私はその背中を見送り、

今日の夕食は何をフレデにご馳走しようか考えていた。


この時、何も知らなかった、

私の人生においてとても大切な出来事が起きることを。

今まで色んな人が私に注意を促してくれていたはずなのに、

毎日が楽しい私が気付けなかったんだ。

ほんの少し……

みんなの言葉の意味を考えて行動をしていたら

もしかしたら運命は

違う方向へ転がっていたのかもしれない。


――悲しい運命の分岐点……それはもう目の前だった。



第四章:Go a long way ~完~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ